人間関係に疲れた時の処方箋 キャサリンの物語5

17.幸運の女神は信じる心に宿る?

某病院

看護婦-『大変です、婦長!!!3Fの病室から煙が!!!』

婦長-『か、か、火事なの???』

看護婦-『わからないです!たった今、患者さんが知らせてくれたんです!』

婦長-『わかったわ!私は消火器を持っていくから、あなたはバケツに水を汲んで持ってきてちょうだい!』

看護婦-『ハイ、わかりました!』

3Fの病室

婦長-『・・・・・(絶句)』

マイケル-『たまには、こういう所でバーベキューもいいもんですね。』

バランス-『でも、屋上の方が気持ちよさそうだけどね。』

マイケル-『じゃあ、今度来た時は屋上でやりましょうよ。』

バランス-『そうだね、ここは換気が悪いから煙たいよね。』

婦長-『あなた方は何をやってるんですかっ~!!!ここは病院ですよ!しかも患者さんがいるっていうのに!今すぐ片付けなさ~い!!!』

キャサリン-『ゴホッ、ゴホッ、ゲホッ・・・。』

マイケル-『あんたが大きな声を出すから起きちゃったじゃないの~。それとも風邪かな?』

婦長-『違います!!!あなた方が出した煙のせいです!全くもう、非常識な人達だわ!』

・・・・・・・

キャサリン-『この部屋、凄い煙たいわね。』

バランス-『キャサリンに栄養のある物を食べさせようと思って、バーベキューをしていたんだけどね。今、怒られちゃったよ。』

キャサリン-『(当たり前じゃないの・・・)』

バランス-『ところで、体の具合はどうだい?』

キャサリン-『手首が物凄く痛いわ。』

バランス-『・・・。』

マイケル-『・・・気持ちはわかるけど、自殺は止めろよ。親だって泣くし・・・。悔しかったら別な方法で復讐できるじゃないか。』

キャサリン-『・・・。』

ポール-『こんにちは。』

ナンシー-『こんにちは。』

キャサリン-『・・・・・(何でナンシーがここに来るの?)』

マイケル-『お見舞えに来てくれたんだな。まあ、座れよ。』

ナンシー-『私のせいでこんな事になって、スミマセンでした。許してもらえないのはわかっているけど、謝りにきたんです。』

キャサリン-『お願い出て行って!最低よ!』

ナンシー-『本当にごめんなさい・・・、じゃあ帰ります。』

ポール-『キャサリンはもう、忘れたのかい?』

キャサリン-『何が?』

ポール-『いつだったかキャサリンは、とても良い事を教えてくれたよね。以前、許すとエネルギーが発生するって僕に言ったよね。あれは嘘だったのかい?』

キャサリン-『う、嘘じゃないけど・・・、でも今の私にはできないわ。』

ポール-『キャサリンに

【許すとエネルギーが発生する】

って言われて、最初はとてもびっくりしたけど、少しずつ試してみることにしたんだ。するとね、エネルギーが発生したのかどうかはわからないけど、ゲームソフトを貸したのがきっかけで友達が一人できたんだよ。自分も周りも少しずつだけど、変わりだしたような気がするんだ。キャサリンのおかげだよ、本当に有難う。』

キャサリン-『・・・。』

ポール-『だからキャサリンを苦しめた奴らを僕は許さない!でもナンシーを恨むのは違うような気がするんだ。ナンシーもキャサリンと同じく被害者だと思うんだ。悪いのはメリー達じゃないだろうか。』

キャサリン-『・・・。』

ポール-『僕はメリー達と戦うよ!メリーはクラスのボス的存在だから、メリーを敵にするってことは、クラス全員を敵にするかもしれない。でもプラス思考でメリー達を退治しようと思ってるんだ。僕は気が弱いから、何を言われても言い返すことができないし、反発する勇気もないけど・・・。でも、もし自分の思考で相手を変えることができるんだったら、気の弱い僕でもできそうな気がするんだ。』

キャサリン-『そんなに簡単じゃないわよ。それにプラス思考って言うけど、バランスさんが言っているプラス思考っていうのは、普通のとは全く違うのよ。』

ポール-『知ってるよ、嫌いな人を好きになればいいんだろう。』

キャサリン-『それがどういう意味なのか知っているの?大嫌いなメリーの事を大好きにならなければならないのよ。』

ナンシー-『私もやってみるわ。キャサリンが学校へ戻るまでに、メリーを退治するの。私がキャサリンの為にできる事は、それしかないと思うの。』

キャサリン-『絶対にできっこないわ!不可能な考え方なのよ!』

ナンシー-『私は人生を変えたいの!家賃が払えなかったら、アパートを追いだされるんじゃないだろうか・・・。バイトを首になったらどうしようか・・・。どうして自分だけがこんなに苦労しなければならないんだろうか・・・。クラスの皆は自分の事をどう思っているんだろうか・・・。もうそんなことを考える人生とはサヨナラをしたいだけなの!』

キャサリン-『・・・。』

ナンシー-『私は【自分の望みが叶う】っていう、魔法の薬(プラス思考)を使ってみたいの。バイトを首になって苦労しようが、クラスの皆が自分の事をどう思っていようが、気にしないことにしたの。魔法の薬があるって事を私は信じたいの!でなきゃ、私の人生を誰が変えてくれるっていうの。』

ポール-『僕も魔法の薬がある事を信じるよ。』

キャサリン-『・・・。』

バランス-『飛行機が空を飛んでいるのを見たことはあるよね。それは、【空を飛んでみたい!】という望みがあったからこそ、飛行機を作り出す事ができたんだと思うよ。それと同じように

【苦労から解放されたい!】、【幸せになりたい!】っていう望みがあるのであれば、その望みを叶える為の道具は既にこの世の中にあるということだよ。その道具が”運”なんだ。』

ナンシー-『もう苦労しなくてもいいのね。』

ポール-『バカにされることもないんだよね。』

バランス-『心配しなくても大丈夫だよ。必ず人生は変えることができるよ。幸運の女神は信じる心に宿るんだ。ただし・・・。』

ポール-『ただし?』

バランス-『最後に大きな試練があると思うけど、それを乗り越えれば幸運の女神は必ず微笑んでくれるよ。』

ナンシー-『試練?』

18.ついに天使が舞い降りた! 最終回

校舎の裏

ナンシー-『悪いけど、お断りするわ。』

メリー-『何言ってんのよ、頭がおかしくなったんじゃないの!私の頼みを断るのはあんたが初めてよ。もう一回聞くけど、キャサリンから10万円都合つけてくれるわよね。 』

ナンシー-『メリー、悪いけど何回頼まれても私の答えは同じよ。人を傷つけてまで、自分の身を守ろうとはしないことにしたの。それにキャサリンが入院しているのを知っているはずでしょ。』

メリー-『今さら何よ!雲行きが怪しくなってきたから、今度は良い子を演じるつもりなの?あんたの裏切り行為が原因で、キャサリンは自殺しようとしたんでしょ。私には関係がないわ。』

ナンシー-『ひどい事を言うのね。でも、おかげで私の信念は固まったわ。』

メリー-『それはどういう事よ!』

ナンシー-『もう、メリーの言いなりにはならないわ!』

メリー-『へぇ~、随分と強気に出たわね!私には、仲間がいっぱいいるのよ。』

リンダ-『やっちゃいなさいよ!私達に逆らうなんて生意気よ!』

メリー-『覚悟はできてるのね?』

???-『暴力はやめたまえ!』

メリー-『誰なの、あんたは?』

???-『通りすがりの者さ。』

メリー-『そのお面はなんなのよ!顔を見せなさいよ!』

???-『お前らのような悪党どもに顔を見せるなんて、10年早いのだ!』

リンダ-『バカじゃないの!まずはこいつからやっちゃいましょうよ!ボコッ、ボコッ!ボッコーン!!』

メリー-『ボコッ、ボコッ!パッコーン!!偉そうな口叩くわりには、随分と弱いわね。よ~しお面をとるわよ!・・・こいつガマだよ!』

ナンシー-『ポールなの?』

リンダ-『本当、ガマだわ!その顔じゃ、お面が必要なのもわかるわね。』

ポール-『ひ、ひどい・・・、そこまで言わなくても。』

ビル(メリーの彼氏)-『おいおい、随分と騒がしいじゃないか。』

メリー-『ちょうどいい所に来たわね。こいつら気が狂ったらしくて、私達に暴力を振るうのよ!』

ビル-『へぇ~、弱虫のガマが抵抗するなんて、そりゃあ気が狂ったかもしれないな。じゃあ一発食らわせて、俺が元通りにしてやるよ。ちなみに俺は空手3段だけどな・・・ガハハ!どこからでもかかってこいよ!!』

ポール-『(こっ、恐い~~、逃げよう。)』

ナンシー-『ポール、何処へ行くの?逃げたらダメよ。戦わなきゃ!』

ポール-『あんな強そうな奴と戦ったって負けるに決まってるよ。ナンシーだって足がブルブル震えてるじゃないか・・・。』

ナンシー-『私だって、コ、恐いわよ・・ブルブル・・。ケンカでの勝ち負けは関係ないのよ!たとえケンカで負けたとしても、逃げなければ私達の勝ちなのよ。』

ポール-『で、でも、やっぱり恐いよ~。おしっこがちびりそうだ・・・。』

ナンシー-『私だって本当は逃げたいわよ!でも、キャサリンの事を考えると逃げるわけにはいかないわ。』

ビル-『何を二人でゴチャゴチャ言ってるんだ!さあ、どっちが先に相手をするんだ?』

メリー-『二人とも気が変わったでしょ?強いものには従うのが、この世で最も賢い選択なのよ。最後にもう一回だけ聞くわよ。10万円都合つけてきて頂戴!別にキャサリンからじゃなくてもいいわ。ガマの家はお金がたくさんありそうだからね。さあ、どうするのよ?』

ナンシー-『こ、断るわ、ブルブル・・・(きっとこれはバランスさんが言っていた試練なのね。私は幸運の女神が微笑むのを信じるわ。)』

ポール-『僕は、ブルブル・・・僕は、ブルブル・・・僕も断るよ。』

メリー-『あっそう、じゃあしょうがないわね。』

ビル-『よし、ガマの顔に俺が一発加えて、色男に変身させてやるよ、ガハハ。よ~し、いくぞ~!』

木陰

マイケル-『大変だ、助けにいかなきゃ!ポールとナンシーがやられちゃうよ。』

バランス-『いや、まだダメだよ。今出て行ったら、せっかくの二人の勇気が台なしじゃないか。あの二人は今、必死になって自分と闘っているんだよ。』

マイケル-『でも、あそこまで頑張ればそれで充分・・・。』

バランス-『あっ・・・!』

マイケル-『あっ・・・!』

・・・・・・・

キャサリン-『止めて!!ナンシーとポールには手を出さないで!!』

メリー-『へぇ~、ナンシーを助けるっていうの?』

キャサリン-『私はメリーに感謝しているわ。』

メリー-『私に感謝???』

キャサリン-『そうよ。メリーのおかげでナンシーとポールという素晴らしい友達と巡り会うことができたんだもの。』

メリー-『じゃあ私の為に、お金を都合つけてくれるかしら?』

キャサリン-『ええ、いいわよ。』

ナンシー-『ダメよそんな事しちゃ。』

ポール-『そうだよ、お金なんか払う必要ないよ!』

キャサリン-『二人とも私の為に有難う。ナンシーとポールにも心から感謝するわ。』

リンダ-『羨ましいわ(ポツリ)』

キャサリン-『え?』

リンダ-『私はいっつもメリーと行動していたけど、それは自分を守る為だったように思うの。ナンシーとポールが、ここまで自己主張できたことに、正直羨ましく思ったわ。私もメリーの影に隠れる人生とはお別れしたいわ。』

メリー-『リンダ、何を言ってるのよ!あなたまで気がおかしくなったんじゃないの!』

リンダ-『メリーと一緒にいれば、クラスの皆はいつもペコペコしていて、とても気分がいいわ。でもあんなに気の弱いポールとナンシーが、逃げないで一歩も引かなかったわ。どうしてあんなに変われるんだろうって、フッと疑問に思ったの。メリー、もう目を覚ましましょうよ。』

ナンシー-『(状況が変わってきているわ・・・)』

ポール-『(やっぱり魔法の薬はあったんだ・・・)』

メリー-『嫌よ、私は今のままがいいの!もう、リンダも勝手にすればいいわ!ただし、私から離れるっていうのは、クラス全員を敵に回す事になるのよ。』

リンダ-『それでも構わないわ。私はメリーの事が嫌いになったわけじゃないのよ。ただ人生の主役を演じたいだけなの!【ヒロインになりたくはないのかい?】って誰かが私の耳元でささやくのよ。』

キャサリン-『あっ、誰かが来るわ。』

先生-『こらぁ~・・・、いじめは止めなさい!メリー、話があるから職員室まで来てもらおうか。』

メリー-『私が?』

先生-『そうだよ、クラスの何人かが教えてくれたんだ。ここにいる事も、今までキャサリンやナンシーを恐喝してきたことも、他に被害者がいるみたいだし、とりあえず職員室まで来てもらおうか。警察にも来てもらっている。』

メリー-『そんなバカな・・・誰かがちくった?』

先生-『キャサリン、今まで気づかなくてゴメンよ。』

キャサリン-『気にしなくていいわ。』

ナンシー-『女神が微笑んだのね!』

ポール-『やったぁ~!これで人生が変わりだすぞ~!。』

木陰

マイケル-『どうやら、上手く解決したみたいですね。』

バランス-『そうだね、やっと天使が舞い降りてきたようだね。』

警察官-『君達、何をやってるんだね。ちょっと署まで来てもらおうか。』

バランス-『え?人違いでしょう?』

警察官-『いいや、人違いなんかじゃないよ。木陰に変質者がいるって、通報があったんでね。』

マイケル-『変質者?』

警察官-『まあ、話は後でゆっくり聞こうじゃないか。』

マイケル-『おい、手を離せよ。誰か、助けてくれ~!!!』

・・・・・・・

ポール-『ん?何処かで聞いたことのある声だが・・・。』

 最後までお読み頂き有難うございます。

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      2023/04/05

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