疲れた時に癒される物語 悩みは天からの贈り物2

 

5.恋

ヘビの奥さん-『山には恐い生き物が、たくさんいるから気をつけてね。』

バランチュ-『心配いらないよ。絶対に戻ってくるから!』

ヘビの子供-『僕の為に、そんな危ない所に行かなくてもいいよ!ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ・・・。』

ヘビの奥さん-『寝てなきゃ、ダメよ。』

ヘビの子供-『うん。でも、こんなに優しくしてくれるお母さんとお父さんがいるだけで幸せなんだ、本当だよ。ゴホッ、ゴホッ。』

バランチュ-『・・・。そろそろ、行かなきゃ。』

マイケロ-『そうだね、郵便屋さんが外で待ってるし。』

ヘビ-『それじゃあ、気をつけてな!』

ヘビの奥さん-『ダメだと思ったら、無理しなくてもいいのよ。』

バランチュ-『ウン、わかった!』

マイケロ-『よし、出発だ-!』

・・・・・

マイケロ-『お待たせ~、郵便屋さん。』

郵便屋さん-『早くカゴの中に入って!もう直ぐ日が暮れてしまうよ。』

バランチュ-『は~い。』

バイクのかごの中

マイケロ-『何の本を読んでるの?』

バランチュ-『ここにあったんだけどね。タイトルは【女性に好かれる100のテクニック】だってさ。』

マイケロ-『ふ~ん、郵便屋さんって、彼女いないのかな?』

バランチュ-『こんな本を読んでるくらいだから、きっとモテないんだろうね。』

マイケロ-『その本の間に、手紙がはさまってるみたいだよ。』

バランチュ-『本当だ。え~と・・・【僕は前から君の事が好きでした。君の事を思うと、仕事も手につかないほどです。この世で最大の罪は、あなたのその美しさかもしれない・・・】

マイケロ-『うわぁ-、キザな奴だね。僕にも見せてよ。』

バランチュ-『ほれっ。』

・・・・・

郵便屋さん-『着いたよ、ネズミ君とカエル君。』

マイケロ-『【もし神様が、僕の願いを一つだけ叶えてくれるのなら・・・】

バランチュ-『叶えてくれるのなら?』

郵便屋さん-『オッ、お前達、何をやってるんだーーー!!僕のラブレターを勝手に読んだりしてーーー!!』

バランチュ-『じゃあ、この本は郵便屋さんのだったんだね。』

郵便屋さん-『ち、違うよ。僕がそんな本を読むわけがないだろう。』

マイケロ-『だって今、僕のラブレターて、言ったよね。この手紙、本の間にはさまってたんだよ。』

郵便屋さん-『(ムカッ・・・)』

バランチュ-『怒ることないよ、郵便屋さん。』

マイケロ-『そうだよ、そのうち、いい彼女ができるよ。人生を投げちゃいけないケロ。』

郵便屋さん-『人生を投げたつもりはないよ。それに振られるって、まだ決まったわけではないんだからね。まぁ、好きな人ができたら、君達にも僕の気持ちがいつかわかる時が来るよ。』

バランチュ-『僕は彼女よりも、ケーキの方がいいも~ん。』

マイケロ-『僕も彼女より、でっかいチャーシューの方が好きだも~ん。』

郵便屋さん-『(幸せな奴らだな・・・)。それじゃあ、ここでお別れだね。』

バランチュ-『うん。郵便屋さんも頑張ってね。ところで、どうして僕達の言葉がわかるようになったの?』

郵便屋さん-『動物たちの言葉が理解できるイヤホーンを、仙人さんからもらったのさ。』

バランチュ-『へぇ~、凄いな。』

マイケロ-『イヤホーンよりも、女性にモテる薬の方がいいんじゃないの。』

郵便屋さん-『オ、オマエ達なー!!』

バランチュ-『マイケロ逃げよう!』

マイケロ-『うん!郵便屋さん頑張ってねー!!!バイバイ!』

郵便屋さん-『(ネズミとカエルにバカにされるなんて、惨めだ。でも、女性にモテる薬っていうのは気がつかなかったな・・・。よし、今度仙人さんに頼んでみよう。ルンルン!)』

・・・・・

マイケロ-『ねぇ、ここで休憩して行こうよ。先は長いんだし。』

バランチュ-『そうだね、ヘビの奥さんからもらったオニギリを食べようか。』

マイケロ-『うん、そっちのオニギリは中に何が入ってるの?』

バランチュ-『ウッ、チュッぱいです。ハズレか・・・(でもヘビの奥さんが作ってくれたんだから食べなきゃ。)』

マイケロ-『う~ん、こっちはうまいケロ。ムシャ、ムシャ。鮭なのだ~』

バランチュ-『羨ましい。・・・あっ!大変だ、マイケロ!!!上を見てよ!!』

マイケロ-『ゲロゲロ、黒い鳥がいっぱい集まってきた。どうしよう・・・。』

バランチュ-『カラスだよ。あいつら頭が良くて、人のエサを横取りするのが上手いんだ。』

マイケロ-『あっ、ダメだよ。こっちに向かって飛んでくるよ。逃げなきゃ!!』

バランチュ-『よし、走れーー!!』

マイケロ-『あそこに穴があるよ!そこに逃げよう!』

穴の中

マイケロ-『ふっー、危ないところだったね。』

バランチュ-『ほんとだね。』

穴の中の住人-『きゃーーーーー!!!勝手に入ってこないでよ!!』

バランチュ-『ごめん、ごめん。カラスに追いかけられてたんだ。だから直ぐに出て行くよ。』

穴の中の住人-『・・・まったく、レディの家に無断で入ってくるなんて、非常識よ!』

バランチュ-『あれ?ひょっとして君はカエルだよね。』

穴の中の住人-『ええ、そうよ。名前はケロミよ。親元から離れて、一人暮らしをエンジョイしてるの。』

バランチュ-『へぇ~。マイケロとは違って、品があるというか可愛らしいというか・・・。』

マイケロ-『オッホン、え~と・・・、この世で最大の罪は、君のその美しさかもしれない・・・。』

ケロミ-『あら~、嬉しい事言ってくれるのね。ポッ。』

バランチュ-『(おいおい、それって郵便屋さんのパクリでしょ)』

マイケロ-『もし神様が、僕の願いを一つだけ叶えてくれるのなら・・・。』

ケロミ-『叶えてくれるのなら?』

バランチュ-『マイケロ、もう大丈夫だよ、カラスはあきらめて向こうに行ったみたいだから。早く行こう!』

マイケロ-『ごめんよ、バランチュ。僕はどうやら、ケロミに恋をしてしまったようなんだ。だから、僕はここにとどまるよ。』

バランチュ-『嘘でしょ!さっき、彼女よりもチャーシューの方がいいって、言ったばかりじゃないか!それに、僕よりもケロミの方が好きなのかい?僕とマイケロはずっ~と前からの友達だったんだよ。』

マイケロ-『そうじゃないんだ。バランチュのことはとっても好きさ。でも、その好きとは、ちょっと違うんだよ。』

バランチュ-『ヘビの薬はどうするんだい?約束したじゃないか!』

マイケロ-『ごめんよ、バランチュ。この気持ちは、もうどうにもならないんだ。』

バランチュ-『わかったよ、サヨナラ!!』

・・・・・

バランチュ-『ウェーーン、マイケロなんて、大嫌いだー!僕は一人ぼっちじゃないか。これから街まで、たった一人で行くなんて・・・。また、宝物(友達)を失った・・・。マイケロのバカ、バカ、バカーーー!』

6.退治するのは、おのれの心なり

バランチュ-『わっ、なんだ、あれは!でも、凶暴そうな顔つきではなさそうだな。(ソロ~リ、ソロ~リ)』

タヌキ-『誰だ!勝手にこの道を通ろうとしている奴は!』

バランチュ-『あ、気づかれたか・・・。』

タヌキ-『この先へ行きたければ、通行料を払うんだな!』

バランチュ-『通行料?!』

タヌキ-『そうだ、わしはこの道を通る動物から、通行料をもらって生計を立ててるんだ。』

バランチュ-『(セコイ奴だ・・・)』

タヌキ-『そのポーチには何が入ってるんだ?』

バランチュ-『ヘビの奥さんからもらった、オニギリだよ。』

タヌキ-『じゃあ、そのオニギリをよこせ!』

バランチュ-『ダメだよ!』

タヌキ-『何ぃー!俺に逆らう気か!力づくで奪い取ってやる!』

バランチュ-『嫌だよ、離せよ!』

タヌキ-『よ~し!親分を呼んでやる!!!ピイーーーーーー・・・』

バランチュ-『その笛はなんなんだ?』

-『ノッソ、ノッソ、誰か俺様を呼んだか!』

タヌキ-『あ~、親分!このネズミが逆らうんですよ!』

-『なんだとー!!!食っちまうゾー!!』

バランチュ-『ウワッーーー、逃げよう!!!』

・・・・・

バランチュ-『あ~、危なかったー。あれ?こんな所に小屋がある、入ってみようーっと。』

小屋の主-『誰じゃ~、勝手にわしの家に入った奴は~。』

バランチュ-『熊に追いかけられてたんです。ところで爺さんは、こんな山奥で何をしているの?』

小屋の主-『見りゃあ、わかるじゃろ。酒を呑んどるのじゃよ。ヒック。オマエも呑むか?』

バランチュ-『僕はお酒は呑めないです。』

小屋の主-『ほ~、そうか。ヒック。それで~?これから何処へ行くのじゃ?』

バランチュ-『この山を超えて、街まで行くんです。でも~、途中でタヌキに邪魔をされて・・・。』

小屋の主-『ヒック。酒をついでくれんかのー。』

バランチュ-『はい・・・。爺さんはいったい何者?もしかして、仙人?』

小屋の主-『そうじゃよ・・・。仙人仲間には、”赤仙人”と呼ばれておる。』

バランチュ-『赤仙人!??』

赤仙人-『いつも酒ばかり呑んで、顔が赤いから、そう呼ばれておる。』

バランチュ-『ねぇ、タヌキを退治する方法を教えてよ!』

赤仙人-『ノドが渇いたのー、ヒック。』

バランチュ-『(はい、はい、つげばいいんでしょ。世話のやける仙人だな~)』

赤仙人-『タヌキを退治?何をバカな事を言ってるのだ!タヌキではなく、おぬしの心を退治するのだよ。』

バランチュ-『僕の心を退治する??』

赤仙人-『そうじゃよ、タヌキに邪魔をされて、さぞかし悔しい気持ちでいっぱいだろう。お前は、その悔しい気持ちをどこかで背負ってきたのじゃよ。』

バランチュ-『たしかに、悔しい気持ちでいっぱいだよ。だってね、二人で街に行くって約束したのに、マイケロが裏切ったんだよ。僕は何もかも、失ったんだ・・・。悔しい気持ちになるのは当然だよ!』

赤仙人-『許してあげればいいじゃろー、ヒック。』

バランチュ-『だって、僕にとっては、唯一の友達なんだもん・・・。ウェーン。』

赤仙人-『ほれ、スルメでも食って元気を出せ!』

バランチュ-『わぁっーい!スルメだー、僕の好物だー!美味いぃぃーー。』

赤仙人-『(な、なんと、変わり身の早い奴だこと・・・)』

バランチュ-『でも、タヌキを退治するのに、どうして僕の心を退治しなければならないの?』

赤仙人-『いいことを教えてあげよう。ヒック。身の周りで起こる事のほとんどは、自分の心が引き寄せているのじゃよ。』

バランチュ-『それ、知ってるぅ~。思考は現実化するんでしょ。でもね、【ケーキが食べたい!】っていう僕の願いは叶ったことがないよー。おやつも全部なくなったし、友達もいなくなったし・・・。』

赤仙人-『よく聞くのじゃぞ、ヒック。この世の中には、新陳代謝(シンチンタイシャ)という自然の摂理が働いておるのじゃよ。』

バランチュ-『チンチンデンシャ?』

赤仙人-『シ・ン・チ・ン・タ・イ・シ・ャ、じゃよ!!新しいものを取り入れる為には、古くなったものを捨てるのじゃよ。人や動物には、必ず寿命というものがある。死があるからこそ、生命の誕生という喜びがある。苦しみという感情があるからこそ、感動というドラマが生まれる。ヒック。』

バランチュ-『・・・。』

赤仙人

『失ったのではなく、新しいものを手に入れる権利を得たのじゃよ。

だから、その悔しいっていう気持ちを捨てるが良い。そうすれば、この先の道に進むことができるじゃろう。』

バランチュ-『へぇ~、感情って大事なんだね。』

赤仙人-『その通りじゃ、ヒック。思考は現実化するといってものー。泣いたり、悔しがったり、悲しんだりしていると、その感情が現実の世界と一致するのじゃよ。だから、仮におやつがなくなったとしても、悲しい感情でいると、その先に待っているのは、【悲しい現実】なのじゃよ。』

バランチュ-『やっぱり、仙人さんは凄いや!ただの酔っ払い爺さんじゃないみたいだね。僕の願いが叶わない理由がわかったよ、・・・仙人さんありがとう!』

赤仙人-『ヒック・・・ヒック・・・。ノドが渇いたのーー。』

バランチュ-『ハイハイ、今つぎますよ。仙人さん、コップにまだお酒が入ってるから、つげないですよ。』

赤仙人-『どうして、つげないのじゃ?』

バランチュ-『だから!お酒が入ってるじゃないの!』

赤仙人-『その通り!新しいお酒が入らない理由がわかっただろう。古いお酒が入っているからじゃよ。今までは、コップにたくさんのおやつが入っていたから、お前の望みが叶わなかったのじゃよ。ケーキの入るすきまなど、これっぽっちもなかったはずじゃ・・・。』

バランチュ-『ということは、僕のコップには何も入ってないから、これから何かが入るってことだね。だから喜んでいいんだよね。そして喜ぶことによって、【嬉しい現実】を引き寄せることができるんだね。』

赤仙人-『その通りじゃ。この酒を持っていくが良い。必ず道は開けるじゃろう、ヒック。』

7.欲しいという気持ちは捨てるべし

バランチュ-『マイケロは今頃、何をやってるのかな~。でも、マイケロのことを憎むのはもうやめよう。彼女と幸せに暮らしてくれればいいや!【自分の心を退治しろ!】って赤仙人さんも言ってたしな・・・。』

タヌキ-『何をブツブツ言ってるんだ!おいおい、ここは通さんぞ。そのおにぎりをよこせ!』

バランチュ-『わかったよ、1個だけあげるよ。』

タヌキ-『1個じゃ、ダメだ!全部よこせ!』

バランチュ-『ぜんぶー?(欲張りなタヌキだな・・・)』

タヌキ-『言う事を聞かないのなら、力づくで奪い取ってやる!』

バランチュ-『あっ、あっ・・・。』

タヌキ-『ついでに、その水もよこせ。』

バランチュ-『ダメだよ、これは赤仙人さんからもらったものだから。あ~、あ~、無理に引っ張らないでよ。』

タヌキ-『ちょうど、喉が渇いていたところなんだ。ゴク、ゴク、ゴク・・・。プハー。なんか気持ちよくなってきたぞ。プハー、ヒック。』

バランチュ-『あっ、酔っ払ってるゾ!今のうちに、ダッシュで逃げよう!』

・・・・・

バランチュ-『やれ、やれ・・・。赤仙人さんの言うとおりだったな。自分の心で敵を退治できるんだったら、これからはどんなに強い相手が現れても、大丈夫だな。』

-『おっ、この間の、ネズミじゃないか!』

バランチュ-『ゲッ!!熊だ!!!(どうしよう)』

-『俺様は、ネズミが大好物なんだ、ウッシッシ・・・、美味しそうだ!』

バランチュ-『そっ、そうだ!己の心を退治すれば、熊だって退治できるはずだ!やってみよう!(熊なんて、怖くない、怖くない。いや、それどころか可愛い顔をしているかも。)』

-『何をブツブツ言ってるんだ!パン!!』

バランチュ-『あ~、僕の顔をぶったーー!なんて、ひどい事を!(おかしいぞ、おかしいぞ、どうして僕の顔をぶつんだ?僕は熊のことを可愛いと思っているのに!)』

-『ほれ、もういっちょう!パン!!』

バランチュ-『あー、またぶったー!痛いよー!(やり方が間違っているのかな・・・。ここを通ることができたら、どんな気持ちになるだろう?そうだ、幸せっていう気持ちになればいいんだ。幸せ、幸せ、ニッコリ。)』

-『ほれ、もういっちょう!パン!!』

バランチュ-『もう、赤仙人さんの、嘘つきーー!!痛いよーー!』

-『もう、お遊びは、終わりだ!そろそろ食っちまうゾ!』

バランチュ-『もうダメだ・・・痛くて体が動けない。』

-『ブッヒッヒ・・・。それでは頂きー!!!・・・痛てて!』

バランチュ-『???』

-『・・・痛てて!誰だ!!!後ろから、石を投げつけてくる奴は!』

バランチュ-『???』

マイケロ-『バランチュを離せ!僕が勝負をしてやる!』

-『なんだとー、カエルのくせして、いい根性してやがる!!まずは、お前から食ってやるわい!!!頭にきたゾーーー!!!』

マイケロ-『バランチュ、早く、僕の背中に乗って!』

バランチュ-『ありがとう、マイケロ。』

マイケロ-『ピョーン、ピョーン、ピョーン。』

-『待たんかい、コラー!!!』

・・・・・

マイケロ-『ふ~、ここまで来れば、もう大丈夫だね。』

バランチュ-『マイケロは僕の事が心配で、助けに来てくれたんだね。』

マイケロ-『ま、まぁね・・・。』

バランチュ-『ところで彼女はどうしたんだい?』

マイケロ-『実は、・・・フラれちゃってね。』

バランチュ-『え~、彼女にフラれたのー。わーい。』

マイケロ-『なんか、凄い喜んでいるみたいだよ。』

バランチュ-『あっ、ごめん。でもね、マイケロと彼女が仲良く暮らしてればいいなって思ってたんだよ。嘘じゃないよ。』

マイケロ-『ねぇ、僕のこと、怒ってない?許してくれる?』

バランチュ-『全然、怒ってないよ。だって、友達じゃないか・・・。それにね、【憎い !】って気持ちを持ったらダメだって、仙人さんに教えてもらったんだ。』

マイケロ-『へぇ~。』

バランチュ-『もう一つ、いい事を教えてもらったんだよ。』

マイケロ-『な~に?』

バランチュ-『失うって事は、悪いことじゃないみたいだよ。欲しいものを得るための権利を得たことになるんだって。チンチンデンシャっていう、自然の摂理が働いているんだって。』

マイケロ-『チンチンデンシャ?』

赤仙人-『新陳代謝じゃよ!!』

バランチュ-『わぁー!ビックリー。どっから出てきたのー!』

赤仙人-『心配で、ちょっと様子を見にきたのじゃよ。それと、一つお願いがあっての。』

バランチュ-『な~に?』

マイケロ-『(ところでこの爺さん誰なの?)』

赤仙人-『酒がなくなったので、新しいのを買ってきてくれんかの。』

バランチュ-『いいよ。買ってきてあげるよー。それに、仙人さんからもらったお酒のおかげでここまで来れたんだからね。ありがとう。』

赤仙人-『それじゃあ、一つだけいい事を教えてあげよう。』

バランチュ-『な~に?』

赤仙人-『お前達は、街へ何しに行くのじゃ。』

バランチュ-『僕はね~、ケーキをお腹いっぱい食べるんだ。』

マイケロ-『僕はね~、チャーシュー入りのラーメンを食べるんだ。』

赤仙人-『ほぅ~、それで?』

バランチュ-『それで?って言われても・・・。』

マイケロ-『あっ、そうだ、ヘビの子供の為に、薬も買いに行くんだよ。』

赤仙人-『ほぅ~、それは偉いのー。・・・で、お前達は街へ何しに行くのじゃ?』

バランチュ-『だから~、ケーキを食べに行くっていってるでしょ!』

赤仙人-『違~う!!!お前達は、薬を買いに行くのじゃ!ケーキとラーメンの事は忘れるのじゃ。そうすれば、お前達の望みは叶うじゃろう。欲しいという気持ちを捨てて、助けたいという気持ちを持つといい。薬の事だけを考えて、前へ進むのじゃ、わかったな!』

バランチュ-『??』

マイケロ-『??』

8.今の苦しみは、過去に作られていた?

郵便屋さん-『郵便で~す!』

仙人-『ご苦労さま。また、孫からの手紙かな・・・。』

郵便屋さん-『・・・。』

仙人-『何で、そこに突っ立ってるのじゃ?』

郵便屋さん-『あの~、実は仙人さんにお願いがあって。』

仙人-『何じゃね?』

郵便屋さん-『女性にモテる薬なんて、ないですかね?』

仙人-『女性にモテたいのかね?』

郵便屋さん-『いや、僕じゃないですよ。僕の友人が、女性に告白できなくて、困ってるから、手助けしたいな~って思っちゃったりして・・・。(ルンルン!)』

仙人-『ほ~。でも、男なら、告白するくらいの度胸がないと、ダメじゃな・・・。まぁ、そういうことじゃ。ほんじゃね。』

郵便屋さん-『待ってください、仙人さん!でも、もし告白して相手の女性にフラれたら、その友人はショックのあまり、人生を投げ出してしまうかもしれないんですよ。そんな事になったら、あまりにも可哀相で・・・。』

仙人-『フラれるって、決まったわけじゃないだろ。郵便屋さんが、友人思いなのはわかるけど、どっちにしろこの先、長い人生一人で問題を解決していかねばならんのじゃよ。今、手助けした所で、本人の為にはならんぞ!』

郵便屋さん-『そうですか・・・、そうですよね。』

仙人-『郵便屋さんが、告白するっていうのだったら、考えたかもしれんがの。いつも、こんな山奥まで、配達してくれて、悪いと思っているからの。』

郵便屋さん-『あの~、実は(ルンルン、ルーン!)・・・本当の事を言うと・・・。』

仙人-『悪いけど、今忙しいのじゃ。話は、また今度な。(バタン!)』

郵便屋さん-『ちょっと、待ってくださいよ~、仙人さん。ドンドン!(最初から正直に話せばよかった・・・。またネズミとカエルにバカにされそうだ。人生って難しいな~。)』

・・・・・

マイケロ-『ね~、バランチュ~、そろそろ休もうよ。足が痛くって・・・。バランチュも足から血が出ているよ。』

バランチュ-『もう、かなり歩いたもんね。どうやら、足の皮がむけたみたいで、ヒリヒリするよ。』

マイケロ-『あっ、あれを見てよ!!街が見えるよ!!』

バランチュ-『わぁー、本当だーー!!あそこにケーキがあるんだね(ワクワク)』

マイケロ-『ここが頂上だから、残り半分ってところだね。まだまだ、長いな~、ゲロゲロ。』

バランチュ-『じゃ、休もうかっ!』

マイケロ-『それがいいケロ。・・・バランチュ、何を考えているの?まだ、僕のことを怒っているのかい?』

バランチュ-『いや、違うよ。マイケロのことは、前と変わらず好きだよ。ただ、赤仙人さんの言ったことが気になってね・・・。』

マイケロ-『ラーメンとケーキの事は忘れろ!って言ったことが気になるのかい?』

バランチュ-『それもそうなんだけど・・・。赤仙人さんはね、こんな事を言ったんだ。【タヌキに邪魔をされて、さぞかし悔しい気持ちでいっぱいだろう。お前は、その悔しい気持ちをどこかで背負ってきたのじゃよ。】ってね。』

マイケロ-『それが、どうかしたの?』

バランチ-『悔しい!って気持ちをなくしたら、すんなりとタヌキの前を通ることができたんだ。そして今、僕たちは、足が痛くて、とても苦しんでいるよね?』

マイケロ-『うん、それがどうかしたの?』

バランチュ-『赤仙人さんの言ってる事が、本当だとすると、僕たちは、どこかで【苦しい】っていう気持ちを背負ってきたことになるのかなって思ってね。』

マイケロ-『ふ~ん。』

バランチュ-『僕の家から、食料が全て無くなった時に、はじめはとても悲しくて苦しかったんだ。でも、【まぁいいや、また一から探そう!】って考える事もできたはずだと思うんだ。それに、最初っから食料にこだわらなければ、無くなったとしても悲しんだり苦しんだりしなくても済むはずだよね。僕たちが今、こうして苦しんでいるのは、実は、あの時に抱いた苦しいっていう感情が現実化してるんじゃないかと思ってね。』

マイケロ-『凄いな~、僕にはサッパリ理解できないけどな。それじゃあ、僕たちが街に行くことは、間違いだったの?』

バランチュ-『いいや、そうじゃない。赤仙人さんは、ラーメンとケーキの事は忘れろ!って言ったけど、夢をあきらろとは言わなかったよ。』

マイケロ-『でも~、ラーメンの事を忘れるっていうのは、夢をあきらめるのと同じ事だと思うけどな。』

バランチュ-『そうじゃないと思うんだ。今こうして、僕とマイケロは、足の皮がすりむけても、痛くても、苦しみながら、頑張って歩いてるよね。だから、どこかで背負ってきた、苦しいっていう感情を捨てれば、今の足の痛みから解放されるんじゃないかって思ったんだ。』

マイケロ-『へぇ~、なんだか奥が深いなー。』

バランチュ-『赤仙人さんが言った、ラーメンとケーキの事は忘れろ!っていうのは、苦しい感情を捨てろってことだと思うんだよ。』

マイケロ-『じゃあ、どうすればいいの?。』

バランチュ-『ケーキが食べれなくても、幸せだって思えばいいんじゃないかな。それに、僕は本当にそう思えるようになったんだ。だって、別にケーキがなくても、マイケロがいつも一緒だから、楽しいし。そして、ヘビの奥さんが作ってくれたオニギリは、とても美味しかったしね。』

マイケロ-『あのオニギリは、美味しかった!また、食べたいケロ!ところで、ヘビの子供は、今頃どうしてるかな~。』

バランチュ-『ヘビの奥さんだって、きっと、ずっとずっと僕たちのことを待っているはず・・・。』

マイケロ-『そうだね~、薬を持っていったら、凄い喜ぶだろうね!今度は、特大のオニギリを作ってくれるかな・・・。僕たちの帰りを楽しみにして待っているヘビさんがいるって、僕たち幸せかもね。』

バランチュ-『赤仙人さんが言うように、街に着くまでは、ラーメンとケーキの事は忘れよう。』

マイケロ-『そうだね。早く、薬を持っていって、皆を大喜びさせてあげよう。』

バランチュ-『マイケロ、大変だよ!いつのまにか、目の前に・・・。』

イノシシ-『グヒヒ、こんな所で何をしている!!』

バランチュ-『これから街に行って、ヘビの子供のために、薬を買いに行くんだよ。』

イノシシ-『ヘビの子供のために、薬を買いに行く!?バッ~カじゃないの!』

マイケロ-『本当だよ、ヘビの子供が熱にうなされていて、死ぬかもしれないんだ。』

イノシシ-『変わった奴らだな。』

バランチュ-『ところで、僕たちを食べるつもりなの?』

イノシシ-『グヒヒ、どうしようかな・・・。』

続きは「疲れた時に癒される物語 悩みは天からの贈り物3」

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      2023/02/21

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