人間関係に疲れた時の処方箋 キャサリンの物語4

13.ゼロにならないと運は発生しない?

キャサリン-『今日はね、いつもご馳走になってるから、秋刀魚を買ってきたのよ。』

バランス-『へえ~、嬉しいね。』

キャサリン-『今日はまだ、ご飯食べないの?』

バランス-『実はねこの間、近所の奥さんに注意されたんだよ。【公園の中で火を使うのはダメだってね】・・・だから今は、近くに川があるから、そこで食べているんだ。これから川の方へ行って食べよう・・・』

川のほとり

バランス-『やあ、マイケル、準備はできたかい?今日はね、キャサリンが秋刀魚を買ってきてくれたんだよ。』

キャサリン-『少し多めに買ってきたのよ。お兄ちゃんはいつも、誰かのまで食べてしまうから・・・』

マイケル-『まあ、あまり気にするな・・・、人生は長いんだから。』

キャサリン-『人の物を食べるのと人生が長いのと、どう関係があるのよ・・・本当に幸せな人ね。』

バランス-『まあまあ、いいじゃないか。』

キャサリン-『ところで、この間の話だけど、嫌いな人を好きになれば本当に、状況を変えることができるのかしら。』

バランス-『確かにキャサリンが、不思議に思うのは当然だと思うよ。こんなこと実践している人は誰もいないだろうしね。でもね、私は単純でバカだから、プラスマイナスで運が発生するんじゃないかって思った時に、試してみたことがあるんだよ。』

キャサリン-『へぇ~。』

バランス-『氷(マイナス)ってプラスの外気に触れさすと簡単に消えるだろう。でも外気がマイナスだったら、氷はそのままの原形をいつまでも保つ事ができるしね。だから嫌いな人(マイナス)を嫌い(マイナス)になるのではなく、好き(プラス)になれば必ず何らかの変化が起きるんじゃないかって思ったのさ。』

キャサリン-『氷に例えるとわかりやすいわね。』

バランス-『それじゃあ、その変化を起こさせる為にはどうしたらいいと思う?』

キャサリン-『プラス思考すればいいんでしょ。』

バランス-『そうだよ、プラス思考してゼロにならないと運は発生しないんだよ。』

キャサリン-『ゼロ?』

バランス-『マイナス100をゼロにする為には100をプラスしなければならないだろう。だから少し嫌いな人(-10)に対しては少し好き(+10)になればいいのさ。しかし問題は大嫌いな人(-100)に対しては大好き(+100)にならなければ、運が発生しないんだ。あくまでも全く対極の思考をしないといけないんだ。』

キャサリン-『じゃあ、私はメリーの事が大嫌いだから、大好きにならないといけないのね。それはもう絶対に不可能な考え方だわ。でもどうしてバランスさんは、そんな考え方ができるの?何かコツでもあるのかな?』

バランス-『最初は私も苦労したよ。まずはプライドが許さないしね。それに過去の嫌な出来事も全て忘れなければならないし、憎しみや悔しさが邪魔をして、そう簡単には思考を変換することはできなかったよ。でも私は、自分の運のない人生をなんとか変えたいという気持ちの方が強かったんだ。なんだか自分の人生は、いつも自分の望みとは逆に進んでいるような気がしたんだ。』

キャサリン-『バランスさんの昔って、運がなかったんですね。なんだか信じられないわ。』

バランス-『お金が欲しいって思っているのに、いつも貧乏だったしね、いい人間関係をきずきたいって思っているのに、人間関係もよくなかったしね、健康でいたいと思っているのに、いつも不健康でね・・・。だから嫌いな人に対しては、どうやったら相手のことを好きになれるだろうかって毎日考えたよ。』

キャサリン-『考えないといけないのね~。』

バランス-『考えるっていうのは、とても大事なことなんだ。ほとんどの人は何か嫌なことがあると、それを忘れようって努力するよね。でも忘れただけでは、何も解決したことにはならないんだ。また暫くすると、同じような悩みが現れてくるんだ。そうすると、またその時に忘れようと努力するだろう。この繰り返しなんだよ。』

キャサリン-『じゃあ、やっぱりプラス思考をしないといけないのね。』

バランス-『でも口で言うのは簡単なんだけど、思考を180度変換するわけだから、かなり難しいのは事実なんだ。だからプラス思考ができないと思ったら、別な方法を考えた方がいいだろうね。一つ目は毎日、楽しい事をすることだね。二つ目は毎日、忙しく動くことだね。そうすると忘れようなんて思わなくても、自然と頭の中から離れていくよ。』

キャサリン-『そうね、プラス思考ができなかったら、そうやるしかないわね。』

バランス-『今の状況がそれ以上悪化することはないけど、かといって改善するわけでもないけどね。それじゃあ、今日は一つだけいいことを教えてあげよう。寝る前に一言、【ありがとう】って言うんだ。これはね、その日、どんなに辛い事があっても、それを言うことでプラス思考していることになるんだ。もちろん、運も発生するよ。でも辛い事があると、なかなか素直に言えないよね。毎日、やってご覧、必ず効果が表れるから。』

キャサリン-『でも~、誰にありがとうって言えばいいんですか。』

バランス-『誰でも構わないよ。頭の中に浮かんできた人でもいいし、親でも兄弟でも友達でもいいしね。いいかい、一番重要なのは、【今日はとてもじゃないけど、ありがとうって言える気分じゃない】って思った時に言うと、必ず少しずつ生活に変化が出るよ。これはプラス思考ができるようになる為の、練習にもなるしね。』

キャサリン-『でも、それって仏壇とか神棚とか、そういう物がないとダメなんじゃないのかな・・・』

バランス-『そんなのは、いらないよ。一番大事なのは心だからね。』

キャサリン-『じゃあ、早速、今日からでもやってみるわ。・・・あ・・・ごめんさい。メールが入ったわ。』

バランス-『恋人かい?』

キャサリン-『違うわ。ナンシーからのメール・・・、今日はバイトが早く終わったから、遊びにこないかって・・・』

マイケル-『そうかい、じゃあ遊びに行っちゃおうかな。』

キャサリン-『違・う・で・しょ!お兄ちゃんじゃなくて、私に言ってるの!』

バランス-『いいお友達ができてよかったね。』

キャサリン-『この間、ナンシーと遊園地に行ってきたの・・・すっごい楽しかったわ。じゃあ、これで帰るけど、秋刀魚は私の分まで食べていいわよ。』

マイケル-『こんなにたくさん食べきれないな・・・』

バランス-『いや、マイケルなら食べてしまいそうだよ。』

キャサリン-『私も同感。』

・・・・・・・

マイケル-『バランスさん、俺達にはメールこないですね。』

バランス-『うん、携帯持ってないからね。』

14.既に望みは叶っている?

メリー-『こんなに上手くいくとは思わなかったわ!』

リンダ-『でもよく考えたものね。さすがメリーだわ。』

メリー-『キャサリンもバッカよね。初めから素直に1万出せばいいのに、結局はナンシーの分も出すハメになったんだから・・・。キャサリンにとって、ナンシーは唯一のお友達だから、困っていたら必ず助けてくれるはずよね。ねえ~ナンシー、これからも頼むわね。』

ナンシー-『え、えぇ。でもこんな事はもうやめましょうよ、キャサリンが可哀相よ。』

メリー-『何、言ってんのよ!今さらそんな事言ったって、もうナンシーも私達の共犯者なんだからね。実はナンシーが私達とグルだったって知ったら、きっとキャサリンはショックでしょうね~。・・・な、な、何ジロジロ見てんのよ!』

マイケル-『あ、いや・・・』

メリー-『早く、注文したもの持ってきてちょうだいよ!』

マイケル-『ハイ、わかりました。(この、くそガキが~!!)』

リンダ-『今の人、どっかで見たことあるような気がするんだけど。』

メリー-『気のせいよ・・・。それにしてもこんなボロイ喫茶店じゃなく、ファミレスにすればよかったわね。』

リンダ-『でもしょうがないじゃないの、まさかナンシーと一緒にいる所を他の誰かに見られたら大変だもの。』

メリー-『それもそうね・・・、次はどんな作戦でいこうか・・・、ナンシーの母親が倒れて、ナンシーが毎日バイトに行くはめになったって言えば、キャサリンも同情して直ぐにお金を出すだろうね。』

マイケル-『おまたせ・・・(こいつらほんとに女子高生か・・・あくどい奴らだな!)』

ナンシー-『でもキャサリンだって、そんなにお金ないと思うわ。』

メリー-『今回が最後よ。それに、きっとおこづかいを貯金しているはずだから、次は5万位大丈夫よ!』

マイケル-『・・・(ご、ごまん~!)』

メリー-『いつまで、そこで突っ立ってんのよ!』

マイケル-『いや、他に注文はなかったかなと思って。』

メリー-『ないわよ!!早くあっちに行ってちょうだいよ!全く、もう!いくら私が可愛いからって、ジロジロ見ないでよ!』

リンダ-『・・・』

ナンシー-『・・・』

マイケル-『・・・(こいつ、俺より幸せものだな)』

川のほとり

キャサリン-『どうしたの、二人とも元気がないようだけど。』

マイケル-『最近、学校はどうだい?何か変化はあったかい?』

キャサリン-『そうね~、そういえば最近メリーが近寄らなくなったわ。それに昼休みとか放課後はナンシーと一緒だから、楽しいわよ。運が発生したのかしら・・・』

マイケル-『そりゃあ、良かったな。』

キャサリン-『でね・・・私プラス思考に挑戦してみようかなって思っているの。』

バランス-『メリーに対してかい?』

キャサリン-『そう、メリーのことをプラス思考するの。』

バランス-『すごいじゃないか!必ず状況は一変するし、私も応援するよ!』

マイケル-『でもバランスさん、あんな奴にプラス思考だなんて。』

キャサリン-『あんな奴って・・・、お兄ちゃんメリーの事知ってるの?』

マイケル-『あっ、いや・・・いつもメリーの話、お前から聞いてるからだよ。』

バランス-『ようやく最後のステップにたどり着いたようだね。メリーの事を好きになるんて、はっきりいって常識では考えられない思考だし、神様だってそんな事はできないかもしれないね。』

キャサリン-『でも、頑張ってやってみるわ。だってこれができれば、全てが解決するんだもの・・・、そうでしょ、バランスさん。』

バランス-『そのとおりだよ。しかも今までとは全く正反対の事が起こるよ。』

キャサリン-『・・・と、いうと?』

バランス-『メリーもクラス全員の子も、皆キャサリンに優しく接してくれるよ。』

キャサリン-『ナンシーみたいなお友達が、いっぱいできるのね。私ね、お兄ちゃんやバランスさんが、ホームレスみたいな生活をしているのに、何一つ愚痴を言ってるのって聞いたことがないわ。だから私も頑張れるの!』

バランス-『何故、愚痴を言わないのか、わかるかい?』

キャサリン-『わからないわ』

バランス-『既に望みは叶っているからだよ。』

キャサリン-『え?望みが叶っている?バランスさんは、こういうホームレスみたいな生活が望みだったの?』

バランス-『全く逆だよ。お金持ちになって優雅な生活をすることが私たちの望みだよ。』

キャサリン-『でも、今は全く逆の状態なのにどうして望みが叶っているって言えるの?なんだか、すっごい矛盾しているわ!』

マイケル-『まあ、君が知らないのも無理はないだろう。俺は既に理解しているがね、ガハハ~。なんなら教えてあげようか。』

キャサリン-『・・・(憎たらしい~!!)』

マイケル-『君は【思考は現実化する】について知っているかな?』

キャサリン-『何で急に・・・君になるわけ。まあ、いいわ、その【思考は現実化する】について話をしてよ。』

マイケル-『よし、いいだろう。君がそこまで言うなら教えてあげよう。確かに君の言うとおり、今の俺とバランスさんはお金持ちとは全く正反対の生活をしているよ。望みが叶っていないのは事実さ。』

キャサリン-『それで?』

マイケル-『【思考は現実化する】というのは、今考えた事がそのまま将来に実現する事を言うんだ。だから【お金がない】と考えれば貧乏になるし、【お金がある】と考えればお金持ちになることができるんだよ。これを今のキャサリンの状況に当てはめると【今の私は、既にクラスの皆と仲良しである】と思考すればいいのさ。仲良しだという事を証明する為には、嫌いとか憎しみという感情を持たないことさ。』

キャサリン-『なるほどね・・・』

マイケル-『嫌いな人を好きになるっていうのは、相手の性格が良くないとできないことだろう。だから好きになることで【嫌いな相手はとても性格が良い】と思考をしていることになり、それが現実化されるんだ。オッホン、わかったかね。バランスさんこれでいいんですよね~。』

バランス-『マイケルの言うとおりだよ。

【全ては今の思考が未来を作りだす】

からね。幸せになりたいのなら【今は幸せ】と考えればいいのさ。すると【今は幸せ】という現実が未来に作り出されるんだ。でもほとんどの人は幸せになりたい、あれが欲しい、これも欲しい!って考えているよね。【今が幸せ】であれば、【何かが欲しい】なんて考える必要はないだろう。』

キャサリン-『へぇ~面白そうね。私も早くプラス思考で今の状況を改善して、お金持ちになりたいわ!その時は私も仲間に入れてくれるかしら。』

バランス-『キャサリンもお金持ちになりたいのかい?』

キャサリン-『女社長になってバリバリお金を稼いで、広大な海でクルーザーに乗りながらゆっくりしたいわね。』

バランス-『どこかで聞いたことがあるようなセリフだな。』

マイケル-『・・・(こいつも俺とおんなじだな)』

15.欲がないと思考は現実化されない?

バランス-『最近、キャサリンが来なくなったね。』

マイケル-『そうですね~。』

バランス-『きっと、プラス思考でいじめが解決したんじゃないかな。』

マイケル-『そうだといいんですけどね~。あれ?』

バランス-『どうしたんだね?』

マイケル-『あそこにいるのは、ポールじゃないかな。』

バランス-『似ているね。』

マイケル-『おい!ポール!!!!!』

・・・・・・・

ポール-『あれ?誰かが呼んでいるみたいだな。それに何処かで聞いたことがあるような声だぞ。嫌な予感。』

マイケル-『ここだよ!!ポール!!』

ポール-『あっ・・・、バランスさんとマイケルだ!』

マイケル-『なんで俺だけ呼び捨てにするんだよ!ボコ!』

ポール-『痛てっ!ゴメンナサイ、聞こえました?それにしても、二人ともこんな所で何やってるんですか?』

マイケル-『見ればわかるだろう!シャケを焼いて食べてんだよ。』

ポール-『いや、そうじゃなくて、なんて言うか、その~・・・。』

バランス-『どうしてこんな汚い格好をして、川のほとりにいるか・・・、って聞きたいんだろう?』

ポール-『そ、そうです。』

バランス-『話せば長くなるんでね・・・、ところでキャサリンの様子はどうだい?』

ポール-『学校、休んでますよ。先生は風邪とか言ってましたけど。』

マイケル-『どうりでここに来ないと思ったら、風邪だったんだ。それなら安心だな。ところでお前はまだ学校でいじめられているのか?』

ポール-『はい。』

バランス-『この間、プラス思考を教えてあげたのにダメなのかい?』

ポール-『バランスさんの言うプラス思考は、難しすぎて・・・。何度か挑戦してみたけど、無理でした。』

バランス-『いじめられて、悔しくないのかい?』

ポール-『悔しいけど・・・、どうにもならい。』

バランス-『その悔しい気持ちを誰かに伝えたことはあるかい?』

ポール-『ないですよ。だって友達もいないんだし、親に言っても心配するだろうし。』

バランス-『ここで全部吐き出して、スッキリしてご覧よ。』

ポール-『僕、なんで生まれてきたんだろう。毎日バカとかガマとか呼ばれて。でも本当に僕はバカだから、バカと呼ばれて当然だし・・・。』

バランス-『ポール、それは違うよ。ポールはとても頭がいいんだよ。もし他の人がポールのように苛められたら、とっくの間に学校を辞めているはずだよ。』

ポール-『頭がいいなんて、生まれて初めて言われましたよ。でも逆に言えば、これだけ苛められているのに学校へ行っているのは、よっぽどのバカってことになりますね。』

バランス-『ポールの場合は、あまり陰湿ないじめではないのが救いだね。ところでポールは卒業したらどうするんだい?』

ポール-『それがまだ就職が決まってないんだ。勉強もしてこなかったから、大学なんて行けないし・・・。それに面接に行っても自信がなくって。だから卒業したら、とりあえずアルバイトをしようと思っています。生きててもつまなんないな~、どうして世の中って、こんなに不公平なんだろうか。』

バランス-『不公平か・・・、昔の私もポールと同じ事を考えていたよ。でもね、世の中は不公平だって考える事は自分を否定している事になるんだよ。私たちが住んでいる地球は完璧にできていると思わないかい?ポールが夜に寝て、朝起きたら必ず外は明るいだろう。一度だって、朝が来なかった日はあるかい?ポールの体だって、お腹が空いたら、ゴハンを食べると元気が出るし、疲れたら眠ればいいんだし、息だって吸ったり吐いたりして、上手く自分の体をコントロールしているだろう?ポールは息を吸うのを忘れた事が、一回でもあるかい?こんなに完璧に出来上がっている人間が住んでいる、この世の中が不公平だって言うのかい?世の中だって、この地球や人間の体と同じように、完璧に作り出されていると思わないかい?』

ポール-『でも~。』

バランス-『ポールの言いたい事はわかるよ。【どうして自分だけがこんな惨めな思いをしなければならないんだろう】って言いたいんだろう。でもね、ポールが今の状況でいること自体も、完璧なんだよ。何故だかわかるかい?』

ポール-『わからないです。』

バランス-『ポールの思考がそういう結果を呼び寄せているんだよ。ポールの望みは何かな?いじめから解放される事かな?』

ポール-『そうですね、いじめから解放されたいですね。』

バランス-『つまらない人生だね。』

ポール-『え?』

マイケル-『それってどういう事ですか?』

バランス-『欲がないんだね・・・、ってことだよ。』

マイケル-『欲を持つとダメだって、前に言いませんでしたっけ?』

バランス-『人間の体は完璧に作られているって言っただろう・・・。人間は欲を持つように作られているんだから、その欲だって人間には絶対に必要なものなんだよ。』

マイケル-『と言うと・・・?』

バランス-『分かりやすく説明しようか・・・。例えば車を運転していて、相手の不注意で車がぶつかったとしよう。相手に車を元通りに直してもらうだけで満足なのかい?それが望みなのかい?ってことだよ。本当は高級車に乗りたいんじゃないのかい?それだったら、車を元通りに直してもらうなんて事は言わずに、ぶつけた相手に高級車を買ってもらえばいいじゃないか・・・って事だよ。』

ポール-『そんな事できるわけがないよな。』

バランス-『いじめから解放されるのが本当の望みじゃないだろう・・・。きっとたくさん友達が欲しい!皆と楽しく過ごしたい!自分に自信を持ちたい!っていうのが望みなんじゃないのかい?』

ポール-『その通りだけど・・・。でも、まずはいじめから解放されない限りその望みは無理ですよね。』

バランス-『いじめから解放されたいって言うのは、故障した車を元通りに直してもらう事と同じなんだよ。車が元通りになって、戻ってきたって別に嬉しくないだろう?ただ車が故障する前の状況に戻っただけじゃないか。いいかいポール、

悩みがある時は【それを無くそう!】って考えるんじゃなくて、【何かを得よう!】って考えればいいのさ

そうすればやる気が出てくるし、頑張ろうって気にもなるだろう。目の前の問題から解放されたい!っていうのは【その状況から逃げたい!】ってマイナス思考していることになるんだよ。』

マイケル-『ん~、奥が深いな~。』

バランス-『いっぺんに話すと、わけがわからなくなるだろうから、今日はこの辺でお話は終わりにするよ。』

ポール-『なんだか、その話の続きをもっと聞いてみたいけど・・・、じゃあ遅いから帰ります。』

マイケル-『おい、ポール。帰りにキャサリンの様子を見てきてくれないか。』

ポール-『いいですよ。そう言えば、学校を休む前の日にキャサリンの様子がちょっと変だったな。』

マイケル-『・・・って言うと?』

ポール-『学校が終わってから、メリーが携帯で誰かと話をしているのをキャサリンが聞いていたんだ。それからキャサリンは、凄い勢いで走って帰っていきましたよ。』

マイケル-『メリーと話をしていたのは、誰だかわかるか?』

ポール-『確か、ナンシーって言ってたようですけど。』

マイケル-『バカヤロー!どうして、そんな大事なことをもっと早く言わないんだよ!ボコッ!』

ポール-『痛てっ!だって・・・』

16.バットを振らない限り、ホームランは打てない?

マイケル-『やあ、マイマザー、元気かい?マイケルだよ。』

-『何をやってるんだい、連絡もなしに!今何処から電話しているの?』

マイケル-『決まってるじゃないか、ロンドンだよ。いや~、電話もかけられないほど、忙しくってね。エリートも大変なもんだよ。』

-『ふ~ん、海外にいるっていうのも怪しいもんだけどね。』

マイケル-『それよりキャサリンは元気かい?ちょっと代わってくれる?』

-『今、具合が悪くて学校休んでるんだけどね。ちょっと待ってよ。』

・・・・・・・

-『具合が悪くて、電話に出れないって言ってるよ。』

マイケル-『わかったよ、じゃあ宜しく言っといてくれよ。じゃあな、マイマザー。』

ポールの家

マイケル-『ダメだ、電話に出ないわ。』

ポール-『困りましたね~。直接、家に行ったらどうですか?』

マイケル-『ダメダメ、俺は今ロンドンに赴任していることになってるんだから。それにこんな格好で家に帰れるわけがないだろう。』

ポール-『ん~・・・。』

マイケル-『まあ、コーヒーでも飲みながらゆっくり考えようじゃないか。それとケーキも頼むね。』

ポール-『ま、まだ食べるんですか!!』

マイケル-『いいじゃないか。ポールはこんなりっぱな家に住んでるんだから、ケーキの一つや二つどうって事ないだろう。それに俺とポールは友達じゃないか!なんなら毎日遊びに来たっていいんだぜ。』

ポール-『(こんなずうずうしい友達ならいない方がいいな・・・)』

マイケル-『なんか言ったか?』

ポール-『あ、いや、今持ってきます。』

・・・・・・・

マイケル-『いや~悪いね、しかもケーキを2個持ってくるなんて気がきくね。』

ポール-『一つは僕のです!!』

マイケル-『だと思ったよ。それより、いい考えが浮かんだんだけど、ナンシーに電話してもらったらどうだろうか。』

ポール-『だって、ナンシーとメリーが仲間だって事、キャサリンは知ってるから・・・。』

マイケル-『でもね、ナンシーはそんなに悪い子には見えなかったけどね。ナンシーが働いているバイト先、ポールは知ってるか?』

ポール-『一度見かけた事があるから知ってるよ。』

マイケル-『よし、じゃあ今から出かけよう。』

・・・・・・・

ポール-『ここのお店ですよ。』

マイケル-『せっかくだから、中に入ろうか。』

ポール-『お金持ってこなかったですよ。マイケルさんがお金持ってるなら、別にいいですけど。』

マイケル-『それじゃあ、外で待つことにしようか(あっさり)』

ポール-『・・・(なんて人だ!)、あっ、今お店から出てきましたよ。』

マイケル-『あっ、君ぃ~。』

ナンシー-『だ、誰ですか!!?』

マイケル-『キャサリンの兄だよ。それともう一人はポールだ。』

ナンシー-『何の用ですか?』

マイケル-『実は君とメリーが携帯で話しているのを、たまたまキャサリンが聞いてしまったんだ。』

ナンシー-『それで仕返しをしに来たってわけね。キャサリンもずるいわね。』

マイケル-『違うよ、俺が勝手にここへ来たんだ。君に仕返しをしに来たわけでもないしね。キャサリンを助けて欲しいんだ!』

ナンシー-『でも、今さら・・・。だって私がメリーと組んでたって事バレたんでしょ。きっと私の事、物凄い憎んでいるに違いないわ。』

マイケル-『キャサリンはね、君と友達になった時、凄い喜んでいたよ。それにナンシーは親を助ける為にバイトをしてるって、褒めていたよ。』

ナンシー-『私だって、本当は・・・、キャサリンとお友達でいたかったわ。一緒にいて楽しかったし。でも私には家の事情があるし。』

マイケル-『でもナンシーはこれからずっと、メリーに脅されて生活するつもりかい?悔しくないかい?それにキャサリンがこのまま学校に戻らなかったら、この先ずっと後悔することになると思うよ。』

ナンシー-『でも何でここにガマがいるの?』

マイケル-『ガマじゃなくて、ポールだよ。』

ポール-『(そうだ、そうだ僕はポールなんだよ!)僕もお願いしに来たんだよ。』

ナンシー-『ポールだって、苛められているのに。キャサリンを助けるなんて、そんな勇気があるわけないわ!』

ポール-『確かに僕は臆病者で他人の目ばかり気にする弱気な人間だよ。今まで通りひっそりと同じ生活を続けていれば、きっと大きな危害を加えられることもないと思うよ。でも、その反対に大きく人生が変わる事もないだろうと思う。僕はただ人生を変えたいだけなんだ。』

ナンシー-『大きな賭けね。ここで動けば天国か地獄のどちらかのカードを引く事になるのね。』

バランス-『キャサリンの為でもあるけど、本当はポールとナンシーの人生そのものを変えてしまう大事なことだと、私は思うよ。』

ポール-『(何処から出てきたんだ?)』

ナンシー-『あなたは何もの?』

バランス-『ポールのお友達だよ。もしここでナンシーが地獄のカードを引いたとしても、そのカードを天国に変える魔法の薬があるから大丈夫だよ。』

ポール-『確かに結果も大事だけど、ここで”行動する”っていうのはもっともっと大事な事だと思うんだけど。』

ナンシー-『いいわ、”ポールでさえ”そこまで考えているのなら、私もやってみるわ。冒険や挑戦なんて、私の人生には全く無縁だと思ってたけど”ひょっとしたら人生が大きく変わるかもしれない”っていう気持ちを持ったのは初めてだわ。』

マイケル-『安心しろよ!ポールの家はお金持ちだから、何か困ったら助けてもらえばいいよ。ケーキだって食べ放題だし、本当にいい友達だよ。』

ポール-『(あまり深くは関わりたくない人だな~。)』

ナンシー-『じゃあ、キャサリンに電話してみるわ。・・・ダメみたいだわ、電源が切れてるみたい。』

マイケル-『メールを入れてみよう、きっと後で見るはずだよ。その携帯、ちょっと貸して。・・・え~と【ポールもナンシーもバランスさんも皆心配している。ナンシーが謝りたいって言ってるよ。本当だよ。連絡待ってる。マイケルより。】・・・よしと!ポールもナンシーも、これから新しい自分を作り出していくんだね。バットを振らない限り、ホームランは打てないんだ。空振りしたっていいじゃないか。動かなきゃ人生は変わらないよ、・・・いつまで経ってもね。』

続きは「人間関係に疲れた時の処方箋 キャサリンの物語5」

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      2023/02/21

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