人間関係に疲れた時の処方箋 キャサリンの物語3

9.体の向きを変えるだけでいい

ポール-『バランスさん、この間の話の続きですけど。自分が変わるって、どう変わればいいの?何をどう変えたらいいのかさっぱりわからないです。』

バランス-『考え方を変えるだけでいいのさ。ポールにはまだ運の発生する仕組みを教えてなかったね。じゃあ簡単に説明するから、キャサリンもよく聞いておくれよ。』

ポール-『運の発生する仕組み??運って自分で発生させることができるんですか?へぇ~、それはすごいな~。学校では教えてくれなかったけどな。』

バランス-『数学や国語の教科書はあるけど、運の教科書ってないからね。本当は学校の先生や親が教えてくれればいいんだけどね。ポールが毎日生活していて、楽しいって思える事はどんなことかな?』

ポール-『ん~、楽しい事って言われてもな~。食べることと寝ることくらいかな。』

キャサリン-『信じられな~い!食べることと寝ることしか楽しみがないなんて!超かわいそ~!』

ポール-『だって僕には友達がいないし・・・。そうだ、ゲームをするのも毎日の楽しみかな。』

バランス-『じゃあポールは食事の時間を楽しみにしているんだね。夕食はどんな時に食べるの?』

ポール-『どんな時って言われても・・・。夕方7時頃かな~。』

バランス-『夕方7時頃のポールはどんな状態だい?』

ポール-『どんな状態って言われても・・・。なんだか変な質問をしますね。』

バランス-『夕方7時頃のポールのお腹は満腹かい?それとも空腹かい?』

ポール-『そりゃあもう、空腹でしかたがありませんよ。』

バランス-『食事をしている時にポールは、美味しいって感じながらご飯を食べているだろう。何故、美味しいって感じるのだろうか?それは胃袋に何もない状態だからだね。つまり胃袋の中はマイナスってことになるんだ。じゃあ満腹の時はどうだろう。胃袋の中にはまだ消化されてない食べ物がたくさん残っているね。満腹の時は胃袋の中がプラスってことになるよね。ポールは満腹の時にご飯を食べたいと思うかい?』

ポール-『さすがにお腹がいっぱいの時は食べたいと思いませんね。それに美味しいとも思わないし。』

バランス-『胃袋の中は空腹の時がマイナス満腹の時がプラスだね。じゃあポールにとってご飯はプラスかい?それともマイナスかい?』

ポール-『もちろんプラスですよ。』

バランス-『そのご飯(プラス)は空腹の時(マイナス)に食べるのが自然だね。美味しいっていう気分を味わう為には空腹の時に食べるのが一番だよね。満腹の時(プラス)に食べたいって思わないだろう。空腹(マイナス)の時にご飯を食べると何かエネルギーが発生していないかい?』

ポール-『エ、エネルギー??ご飯を食べるとエネルギーが発生するんですか?』

バランス-『そうだよ、【美味しい!】っていうエネルギーが発生しているじゃないか!』

ポール-『美味しいっていうのがエネルギーだったなんて、初めて聞きましたよ。』

バランス-『空腹の時(マイナス)に食べるから、美味しいっていう気持ちを味わうことができるんだよ。空腹の時(マイナス)にご飯(プラス)を食べるのが当たり前だし、それが自然なんだよ。』

ポール-『じゃあマイナスとプラスが合わさるとエネルギーが発生するっていうことですね。電池もプラスマイナスがあるし、それと同じですね。』

バランス-『今のポールは学校でいじめられているから、悔しくてしかたがない気分だろう。ポールにとって今はマイナスの状況だから、お腹がペコペコの状態と全く同じじゃないか。』

ポール-『じゃあご飯を食べろと言うんですね?』

バランス-『そうだよ。そのご飯の役目を果たすのがプラス思考だよ。ポールは学校でいじめられる(マイナス)と【悔しい】というマイナスの感情を持つだろう。それはカラッポの胃袋の中に手を突っ込んで、食べ物を取り出そうとしているのと同じことなんだよ。どうだい?とても不自然でバカげているだろう。ポールは学校でいじめられているのに(マイナス)、何故そこでご飯を食べようと(プラス)しないのかな?』

ポール-『ご飯を食べるって・・?』

バランス-『決まっているだろう。

喜ぶんだよ』

ポール-『え~!!!いじめられているのに、喜べっていうんですか~!!!』

バランス-『空腹の時(マイナス)にご飯(プラス)を食べるのが当たり前だろう。』

ポール-『で、でも~、、、り、理解できないですよ。いじめられているのに、喜ぶなんて狂ってますよ!あまりにも常識からかけ離れすぎてますよ。』

キャサリン-『まあ無理もないわね。私だって最初は狂ってるって思ったんだから。でも私はそれが自然かなって少しだけ思えるようになったわ。』

ポール-『それに世間で言うプラス思考とはちょっと違うような気がするし・・・。』

バランス-『でもねポール、これが自然なんだよ。自分の人生を変える為には、プラスとマイナスでエネルギーを発生させるしか方法はないんだ。』

ポール-『プラスとマイナスでエネルギーが発生するのはわかりましたよ。でもそれを自分の人生に応用するとなると、思考を180度変換しなくちゃならないですよね。僕には無理だ。そんなことできるわけがない・・・。』

バランス-『今、ポールは目の前の道を歩いているとしよう。すると前から大きな犬がポールに向かって吠えながら走ってきた。ポールはびっくりして、すぐに方向転換して逃げるだろうね。でも逃げる為には何かを180度、変換しないといけないだろう。体の向きをガラリと変えずに逃げることができるかい?走る方向を180度変えるなら、体の向きも180度変えるのが当たり前なんだ。私の言いたいことはわかるかい?』

ポール-『わ、わかります、痛いほどかわりますよ。今まで僕が歩んできたみじめな人生を変える為には、体の向きを変えないといけなんですね。』

バランス-『その通りだよ、ポール。体の向きを変えない限り、いつまでもみじめな人生を歩むことになるよ。』

ポール-『なんだか、バランスさんの言ってることが、少し正しいような気がします。でも今日は頭の中がパニックです。【バカバカしい考えだ】というのと【それが自然な考えで、ひょっとしたら自分の人生は変わるかもしれない】という気持ちです。』

キャサリン-『じゃあ、今日は遅いからこれで失礼します。私も頑張ってプラス思考して人生を変えて見せるわ。』

バランス-『いつか良い知らせが聞けることを祈っているよ!』

10.幸福のメッセージ?

メリー-『おこづかいをもらってちょっとリッチだから、今日は何を食べようかな。』

リンダ-『私はね、コーヒー。』

メリー-『じゃあ私はサンドイッチのセットにするわ。』

リンダ-『ねえ、ねえ、あの人見てよ。自動販売機の下を覗いて何か探しているみたいよ。』

メリー-『やだ~、ホームレスでしょ。惨めなオジサンね。』

リンダ-『でも、まだ若い感じがするわよ。』

・・・・・・・

マイケル-『10円玉ちゃ~ん、何処へ行っちゃったの~。110円じゃ缶コーヒーが飲めないよ!参ったな~。あっ!キャサリンじゃないか。俺だよマイケルだよ。お願い10円貸して~!!』

キャサリン-『だ~れ?知らないわよ。お願いだから近づかないで!恥ずかしいじゃないの!』

マイケル-『おい、実の兄だぞ。俺の顔を忘れたのか?』

キャサリン-『知ってるわよ。お願いだから大きな声を出さないでよ。皆こっちをジロジロ見て恥ずかしいじゃないの。どうして街中でそんな汚い恰好しているのよ。』

マイケル-『実はな、マフィアに狙われて、それで変装してるってわけさ。』

キャサリン-『バカじゃないの!今時マフィアだなんて。嘘をつくならもっとまともな事を言ってよ。なんだか何ヶ月も前から、ホームレスが板についてるって感じよ。海外に出張行ってるんじゃなかったの?親がその格好見たら泣くわよ。ここじゃ恥ずかしいから近くの公園で話をしましょうよ。』

・・・・・・・

キャサリン-『はい、缶コーヒー。奢ってあげるわ。』

マイケル-『ありがとう~。うめぇ~。』

キャサリン-『どうしてそんな汚い格好してるの?借金でもしたんでしょ!』

マイケル-『それは違うな。わざとこういう状態になったのさ。寝る家があり、家族もいて、仕事もあって、友達もいる・・・。そういう普通の状態から、成功したって面白くないからな。』

キャサリン-『強がり言って~。じゃあ人生を諦めたわけじゃないのね。それを聞いて安心したわ。』

マイケル-『ホームレスになった全ての人が、人生を諦めているわけじゃないんだ。そこから必死に這い上がろうとして頑張っている人もいるんだ。それを見ると俺も頑張ろうって!勇気が出てくるよ。それにバランスさんも応援してくれてるし。ところでお前、学校でまだいじめられているのか?』

キャサリン-『同じクラスにメリーって子がいるんだけど、最近お金を貸してくれって言うようになったの。私も親からそんなにお小遣い貰ってないから、いつも断ってるんだけどね。そしたらこの間、私にわざとぶつかってきて危うく階段から転げ落ちそうになったわ。机の上にはいつも「バカ」とか「ケチ」とか書いた紙が置いてあるし。 』

マイケル-『それってタカリだろう。いくら高校生だからって、それはりっぱな犯罪じゃないか!一度、先生に相談した方がよくないかぁ。高校生だから、せいぜい2、3千円なんだろうけど、絶対に貸さない方がいいぞ。そういう奴は一度味をしめると、必ず次も来るからな。』

キャサリン-『それがね、1万貸してくれって言われたの。』

マイケル-『1万円?大金じゃないか!今の俺だったら1万あれば、楽に1ヶ月は暮らしていけるのにな~・・・』

キャサリン-『でもね、階段から転げ落ちそうになった時【大丈夫?】って声を掛けてくれた子がいるの。今まで皆からずっと無視され続けたけど、心配してくれて声を掛けてもらったのは今回が初めて・・・。とても嬉しかったわ。ひょっとして私の回りは変化してきてるんじゃないかって思うの。どう思う?』

マイケル-『そうかぁ、良かったな、一歩前進ってところかもな。プラス思考の効果がようやく表れてきたのかもしれないな。その子と友達になれたらいいのにな。』

キャサリン-『そうねえ、でも期待しないわ。』

マイケル-『でも人間って、どんな不幸せな時でも幸福を得ることってできると思うんだ。今、一本の缶コーヒーを飲んでるけど、こんなに美味しいって思って飲んだこと今までにないからな。苦労が多ければ多いほど、その後に天国を味わうことができるってバランスさんが言ってたよ。』

キャサリン-『そうかもね、たった一言【大丈夫?】って言われただけで、なんだか心にジーンときちゃったしね。でもね一つ疑問があるんだけど、その天国や感動を味わうためには常に苦労していなきゃダメってことかしら。そういうことにならない?』

マイケル-『ん~、俺にはちょっとわからないな。今度バランスさんに会ったら聞いてみるよ。でも俺が思うには、ずっと永遠に幸せでいられるのは無理だと思うんだ。例えば真夏にエアコンの効いた部屋に毎日ずっと閉じこもっても、涼しいっていう気持ちよさは得られないと思うんだ。やっぱり外に出て、暑さを体験するからこそ、涼しいって感覚が得られると思うんだ。だから適度に苦労もした方がいいような気がするな。』

キャサリン-『でも私の場合は適度どころじゃないわ。もうず~~と前からクラスの子に無視され続けてるのよ。』

マイケル-『そこなんだよ、問題は!苦労がいつまでも続く人と苦労があってもそれをいつの間にかプラスの方向に変換する人の違いは、苦労があった時にどんな思考をしたかによって決まると思うんだ。ちょっと長いトンネルに入ったと思えばいいよ。出口はもう目の前だろう。』

キャサリン-『もう少しの辛抱ね。』

マイケル-『キャサリンはいつも上ばかり見てるだろう。』

キャサリン-『上?』

マイケル-『そうだよ、自分よりも幸せな人達ばかり見てるだろう。クラスの友達は皆、幸せそうでいいなって思ってるだろう。だから自分は不幸だって思うのさ。たまには下を見れよ。ポールは元気かい?』

キャサリン-『ええ、元気みたいよ。そうねえ、苛められているのは私だけじゃないもんね。』

マイケル-『同じホームレスの仲間でも、身寄りのない人やリストラに遭って次の仕事が見つからずしかたなく家を売って奥さんと別れた人も結構いるよ。皆一人ぼっちなんだ。それを見ると俺はまだまだ恵まれているなって思うよ。そう考えるとあまり不幸って気持ちにならないんだ。』

バランス-『マイケルの言うとおりだよ。元気だったかいキャサリン?』

キャサリン-『バランスさん!!どうしたっていうの、その格好は?』

バランス-『マイケルと相談してね、知らない世界を色々体験してみようってことになったのさ。キャサリンはもう、これから大丈夫だと思うよ。プラス思考も上手くできてるみたいだしね。苦労が長く続く・・・っていうのはね、幸福のメッセージを受けとらないからだよ。』

キャサリン-『幸福のメッセージ???』

バランス-『今日はこれから仕事があるから、暇な時にでもまたここへおいでよ。』

キャサリン-『はい、それじゃあ兄をよろしく!』

11.苦労の中に隠されているものは?

メリー-『お金、持ってきた?』

キャサリン-『毎月ちょっとしか貰ってないお小遣いなのに、1万なんて大金ないわよ。』

メリー-『ないじゃ、すまされないのよ!小遣いが少ないんだったら、親の財布から、くすねてくればいいじゃない!。』

リンダ-『貸してって言ってるだけなんだから、そのうち返すわよ。』

メリー-『それに今日はムシャクシャしてるから、ちょっと体を動かさないとね。まずは腕の運動から・・・。』

キャサリン-『痛い・・・』

メリー-『次は足の運動・・・』

キャサリン-『う・・・痛いぃ・・・』

メリー-『告げ口したら、もっと痛い目にあうからね。それに手足の運動をして、たまたまキャサリンがそこに突っ立ってただけなんだから。階段を歩く時は気をつけた方がいいわよ、この間よろけて階段から落ちたでしょ。3日だけ待ってあげるわ。それに、兄弟がホームレスをしてるなんて、皆に知られたくないでしょ。』

キャサリン-『どうしてそれを・・・』

リンダ-『この間、一緒にいる所を見ちゃったのよね~。じゃあまた3日後ね。』

キャサリン-『・・・』

・・・・・・・

ナンシー-『大丈夫?』

キャサリン-『あ・・この間、階段から落ちた時に声をかけてくれた子ね。』

ナンシー-『そう、隣のクラスのナンシーよ。最近あなたがメリーに苛められているから、ずっと気になっていたのよ。』

キャサリン-『あ、ありがとう。』

ナンシー-『あなたも可哀相ね。メリーみたいな性格の悪い子に付きまとわれるなんて、ほんと同情するわ。それよりケガしてない?もし良かったら私の家で休んでいかない?』

キャサリン-『え・・本当にいいの?』

ナンシー-『ええ、いいわよ。よろしくね、私はナンシー。』

キャサリン-『私はキャサリンよ。』

ナンシーの家

ナンシー-『おんぼろアパートでびっくりしたでしょ。』

キャサリン-『そんなことないわよ、私の家も似たようなもんだから。』

ナンシー-『力になれなくてゴメンね。本当は助けてあげたいんだけど、キャサリンの味方をすると、今度は自分が苛められるような気がして、とても怖いの・・・。』

キャサリン-『いいのよ、そう思うのが当たり前だと思うし・・・。でもこうやって心配してくれただけでも、とても嬉しいわ。』

ナンシー-『私で良かったら友達になってあげるわよ。私もね、友達ってあまりいないから・・・。』

キャサリン-『凄い嬉しい!でも学校では話をしない方がよさそうね。ナンシーも苛められるのは目に見えているからね。』

ナンシー-『そ、そうね、ゴメンね。今度の日曜日、私アルバイトが休みなの。遊園地にでも行って、たまには外でパッーとストレス発散しましょうよ。』

キャサリン-『いいわね、行く~。アルバイトしてるんだ、偉いね。』

ナンシー-『そんなことないわよ。うちね、親が離婚してるから母親だけなの。見たとおり家は貧乏だから、私がアルバイトして家計を助けないと生活していけないの。水曜と日曜がお休みで、今日はアルバイトが休みだったの。』

キャサリン-『ほとんど毎日アルバイトじゃない。偉いな~、私も見習わなくっちゃ!今日はもう遅いから帰るわ。また遊びに来てもいいかな?』

ナンシー-『ええいいわよ、何もお構いできないけどね。』

某公園

キャサリン-『やった~!聞いて、聞いて、友達ができたのよ!』

マイケル-『よかったな!そんなに喜んだ顔を見るのは久しぶりだな。』

キャサリン-『この間、階段で【大丈夫】って声をかけてくれた子なの。ナンシーって名前でとても真面目な子なのよ。それに今度の日曜日、遊園地に行く約束をしたの。』

マイケル-『俺も一緒について行こうか?』

キャサリン-『バカじゃないの?冗談はやめてよ。それにそんな汚い格好で遊園地になんか行ったら、恥ずかしいじゃないの。』

マイケル-『ハハ、冗談だよ。これでキャサリンも一件落着だな。』

キャサリン-『でもね、まだお金の事が解決してないの。それさえ解決すれば、何も不満ないんだけどね。』

マイケル-『この間も言ったけど、先生に相談しろよ。キャサリンの回りは既に好転してきてるんだから、きっとなんとかなるよ。』

キャサリン-『そうね、その方がいいかもね。ところで今日はバランスさんいないのね。』

マイケル-『ほら、あそこにいるよ。』

バランス-『お~~い!!焼けたぞ~、マイケル!早く来いよ~。』

キャサリン-『なにしてるの?』

マイケル-『いいから来いよ!』

バランス-『おっ、キャサリン、ちょうどいい時に来たね。さあ、一緒にバーベキューをしようじゃないか。』

キャサリン-『バ、バーベキュー?だってここは公園じゃないの!こんな所で焼き肉食べるなんて信じられないわ。』

バランス-『まあ、堅いこと言わずに食べようじゃないか・・・』

キャサリン-『そ、そうね・・・。二人とも面白い生活してるのね。どうして、こんな生活しているのに二人もと楽しそうにしていられるの?』

バランス-『それはね、自分の捜し求めているものがここにあるからさ。』

キャサリン-『え?よくわからないわ。そういえば、この間、苦労が続くのは幸福のメッセージを受け取らないからだって言ってましたよね。それってどういう意味なんですか?』

バランス-『幸福のメッセージはね、なかなか見つけ出すことができないんだ。何故だかわかるかい?それはね、マイナスや苦労している状態の時にしか現れないからなんだよ。例えば友達と明日から旅行に行く予定だったのに、運悪く車で事故を起こし、足の骨を折って入院したとしよう。せっかく旅行を楽しみにしていたのに、事故だなんて本人はきっと【運が悪いな~】って思うだろうね。でもねそこに何かが隠されているんだよ。決して偶然に事故にあったわけではないのさ。』

キャサリン-『へぇ~、偶然じゃないんだ~。』

バランス-『普段からお金持ちになりたいって思っている人は、きっとお金持ちになれる木を見つけることができるだろう。病院の中にヒントが隠されているかもしれないし、同じ病室の人が何か大切なメッセージを伝えてくれるかもしれないし・・・。必ず何かが隠されているって信じればいいのさ。そうすれば、必ず見つけ出すことができるはずだよ。例えば学生時代の友達に出会ったとしよう。でも、それほど親しい間柄ではなかったから、きっと挨拶はしないだろうね。でも何かがあるかもしれないって信じている人はその時に必ず声をかけるだろうね。いいかい、マイナスの状態をプラスに変換できる人は、落ち込まずに日々の起こる出来事に意識しているのさ。』

キャサリン-『じゃあ、私が友達できたのも偶然じゃないかもしれませんね。』

バランス-『友達ができたのかい?よかったじゃないか!じゃあ、今日はお祝いだね。お肉をいっぱい食べて、ビールでも飲もうか。おっと、キャサリンは未成年だから、ジュースだね。』

キャサリン-『でも・・・もうないです。』

バランス-『え、何がない?』

マイケル-『いや~!食った、食った、腹いっぱいだよ~!!』

バランス-『マイケル!肉がな~~い、じゃないの!』

マイケル-『あっ、でもね。玉ねぎとピーマンは残してあるよ~ん。』

バランス-『こら~、待て~!』

キャサリン-『・・・』

12.周りの空気が人を変える?

メリー-『今日こそはお金、持ってきたでしょうね!』

キャサリン-『・・・』

メリー-『持ってこなかったのね!いい度胸してるわ。じゃあ、しょうがないわね・・・っと!!』

キャサリン-『う・・・。』

ナンシー-『や、やめて!!お願いだらやめて、可哀相よ。』

キャサリン-『ナンシー・・・』

メリー-『ナンシー、まさか助けにきたわけじゃないわよね!あなたも殴られたいの ?それともキャサリンの代わりにお金を用意してくれるのかしら・・・あっ、そうだ!ナンシーはバイトしてるんでしょ!だったら1万や2万どうってことないわよね。給料日はいつ?いつなの?』

ナンシー-『バイト代は全部、家の支払いになくなるから・・・』

メリー-『そんなこと関係ないわ!あんたキャサリンを助けたいんでしょ!だったら店のレジから抜いてくるなり、家の電気代払わなきゃいいでしょ!』

ナンシー-『そんな・・・』

メリー-『わかったわね。3日だけ待ってあげるから、その間に2万用意しとくのよ!』

ナンシー-『2万って、そんな大金。』

メリー-『しょうがないでしょ!キャサリンが持ってこないんだから!もしキャサリンが1万持ってきたら、あなたも1万でいいわ。でもキャサリンはその気がないようだから、2万用意するのね。』

キャサリン-『ナンシーは関係ないでしょ!ナンシーは親を助ける為にバイトしてるのよ!』

メリー-『じゃあ、あんたが2万持ってくればいいでしょ!』

キャサリン-『・・・』

メリー-『じゃあ、3日後ね。』

ナンシーの家

キャサリン-『ゴメンね、ナンシー。私のせいであんなことになっちゃって。まさか助けに出てくるなんて思ってもみなかったわ。』

ナンシー-『いいのよ。見ているのが辛くなってきて、つい・・・。』

キャサリン-『ありがとう!でも、どうしようか。先生に相談しても、どうせ解決してくれないから、警察に行きましょうよ。きっとなんとかしてくれるわよ。』

ナンシー-『警察?そんなことしたってダメよ、何の解決にもならないわ。それにそんなことしたら、メリーのことだからもっと陰湿になるわ。』

キャサリン-『だって他に解決する方法がないじゃないの。』

ナンシー-『私、今のバイト辞めたくないの。』

キャサリン-『どういうこと?』

ナンシー-『以前、メリーと揉めたことがあった時にバイト先へ嫌がらせにきたのよ。つり銭が足りないだの、注文したものと違うだの・・・毎日人を変えて嫌がらせしに来たわ。そこのバイト先が首になって、今の所が2回目なの。だからきっと、また嫌がらせしに来るのは決まっているわ。そうなるとお金が入ってこなくなるし、困るのよ。』

キャサリン-『困ったわね~。』

ナンシー-『明日、遊園地に行けないわ。そのお金をメリーに渡してそれで勘弁してもらうわ。』

キャサリン-『でも~、明日は遊園地に行きましょうよ。私が2万なんとかするわ。心配しなくても大丈夫よ。』

ナンシー-『でも、悪いわ、キャサリンに迷惑かけて・・・。』

キャサリン-『いいのよ、もともとはナンシーに関係のなかったことなんだから。ね、だから明日は何も考えないでパーッと遊園地で遊びましょうよ。』

ナンシー-『ん・・・。』

某公園

バランス-『友達ができたっていうのに、元気がないようだね。』

キャサリン-『実は今日、その友達が私のことを助けてくれたの・・・。でも今度は逆にその子が苛められて・・・2万持って来いって言われて。』

バランス-『先生に相談した方が良くないかい。』

キャサリン-『確かに先生に相談すれば、お金の問題は解決するかもしれないけど、メリーの事だからきっとナンシーのバイト先へ嫌がらせをしに行くに決まっているわ。その子、バイト代で家計を助けているの。だからメリーがお店に嫌がらせに来たら、きっと首になるわ。そこまで先生が面倒見てくれるかしら。』

バランス-『それじゃあ、そろそろ次のステップに進もうか。』

キャサリン-『次のステップ?』

バランス-『プラス思考だよ。今の状況をガラリと変えるためにね。』

キャサリン-『状況を変えるって、そんな事ができるのかしら。それに何に対してプラス思考すればいいの?』

バランス-『メリーに対してプラス思考するんだよ。』

キャサリン-『も、もしかしてメリーの事を好きになれって言うの?』

バランス-『その通りだよ。』

キャサリン-『む、無理よ!そんな事、絶対にできないわ!メリーのことを好きになるだなんて、私にはできないわ!』

バランス-『でもよく考えてご覧。キャサリンは今まで、不可能だって思えることを可能にしてきたじゃないか。ママのいい所を見れるようになったし、あれほど嫌いだったポールに対してさえプラス思考ができたじゃないか。ここでプラス思考ができれば、全ては解決するんだよ。』

キャサリン-『でも、どうやって・・・プラス思考するの?例え状況が変るのがわかっていたとしても、メリーのことを好きにはなりたくないわ。』

バランス-『キャサリンならできると思ったんだけどね。』

キャサリン-『でもどうして、メリーはあんなに悪いのに、誰も悪いって非難しないのかしら。それにどうして、皆それを許せるのかしら、先生も、クラスメイトも・・・、何だかとても情けないわ。それにどうしてナンシーみたいないい子が苛められるの?世の中ってとても不公平だわ。』

バランス-『メリーにとっては今の環境がとても居心地がいいのさ。回りの皆は、メリーの事を避けたり、怖がったりしてマイナス思考しているだろう。皆が悪い子だって決め付けているから、メリーも悪い子の役を演じてるいる方が楽なんだよ。例えばクラスの委員長になってくれって頼まれたら、キャサリンはどうするだろう。少しは皆の模範になろうとして、変わろうとする気持ちにならないかい。メリーも同じことだよ。誰かがプラス思考してあげれば、メリーも変わるんだよ。』

キャサリン-『・・・』

バランス-『また今度、話そう。今日はシャケが焼けているから一緒に食べないかい。』

・・・・・・・

マイケル-『今日のシャケは上手いな~。あの二人はいつまで話してるんだろう。も~、バランスさんのシャケも食ってしまえ。』

続きは「人間関係に疲れた時の処方箋 キャサリンの物語4」

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      2023/04/05

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