疲れた時に癒される物語 悩みは天からの贈り物3

 

 

9.全ての出会いは必然なり

イノシシの弟-『兄さん、何をやってるんだい?』

イノシシ-『見ろよ!目の前にご馳走があるんだぞ、グヒヒ・・・。お前も食うか?ネズミとカエルのどっちがいい?』

イノシシの弟-『兄さん、ネズミもカエルもケガをしていて、可哀相じゃないか。』

イノシシ-『お前は本当に、優しい奴だな。』

イノシシの弟-『これから、街まで行って、兄さんの大好物のケーキをとってくるから、それまでは我慢しててよ。』

イノシシ-『いつも悪いな~、迷惑かけて・・・。わかったよ、お前がそういうなら、こいつらは逃がしてやるよ。』

イノシシの弟-『ところで君たちは、これから何処に行くんだい?』

バランチュ-『僕たちはね~、これから街に行くんだ!』

イノシシの弟-『ちょうど良かった、これから街に行くから、僕の背中に乗っていくといいよ。それに、君たちは足の皮がすりむけて血が出ているじゃないか。』

バランチュ-『うん、だってね、ず~と向こうから、二人で歩いてきたんだよ。』

マイケロ-『そうだよ、この山の麓から、ず~とず~と歩いてきたんだ。』

イノシシの弟-『へぇ~、それは凄いや。どうして、そんな遠くから、わざわざ来たんだい?』

バランチュ-『あのね~、ケーキ・・・、じゃなくって、ヘビの子供が熱にうなされて苦しんでいるから、それで薬を買いにきたんだ。』

イノシシの弟-『君たちは、優しいね。ヘビの子供の為にこんな遠くまで来るなんて。それじゃあ、一緒に街まで行こうか。』

バランチュ-『うん!』

マイケロ-『うん!』

イノシシの弟-『兄さん、これから街まで出かけてくるよ。』

イノシシ-『気をつけてな・・・。危ないって思ったら、無理せず直ぐに戻ってくるんだぞ!』

イノシシの弟-『あぁ、わかってるよ。兄さんも、ゆっくり休むといいよ。』

・・・・・

イノシシの弟-『そのポーチには、何が入ってるんだい?』

バランチュ-『もう、何も入ってないよ。オ二ギリはタヌキに食べられちゃったし。』

イノシシの弟-『じゃあ、お腹が空いてるだろう。僕のクッキーをあげるから、街に着くまでは、それで我慢するといい。』

バランチュ-『うぅ・・・。』

マイケロ-『うぅ・・・。』

イノシシの弟-『どうして、泣いているんだい?食べないのかい?ごめんよ、どうやらクッキーは嫌いだったみたいだね。じゃあ、他に何か・・・。』

バランチュ-『ううん、違うんだ。凄く嬉しくて嬉しくて・・・、それで泣いてるんだ。』

マイケロ-『食べ物って、奪い合うのが当たり前だと思ってたから。それを僕たちに、くれるなんて・・・。』

バランチュ-『イノシシさんって、どうしてそんなに優しいの?』

イノシシの弟-『ん~、僕はそれが普通だと思うけどね。それほど特別なことをしているとも思わないし。君たちの方こそ、ヘビの為にこんな遠くまで薬を買いにくるなんて、とても優しいじゃないか。』

マイケロ-『でもね~、僕たちはそうじゃないんだ。本当の事を言うと・・・。』

バランチュ-『わかったーー!!!』

マイケロ-『ビックリしたよ、バランチュ~。急に大声を出してどうしたの?』

バランチュ-『わかったんだよ。僕たちとイノシシさんが出会ったのは、偶然じゃないんだ。赤仙人さんの言った意味がわかったんだよ。』

マイケロ-『え~、どういうことなの~。教えてよー。』

バランチュ-『赤仙人さんは、【欲しいという気持ちを捨てて、助けたいという気持ちを持つといい。】って言ったよね。僕たちはこの間から、【ヘビの子供を助けてあげたい!】っていう気持ちを、少しだけ持つことができたでしょ。』

マイケロ-『という事は?』

バランチュ-『だから、イノシシさんが僕たちを助けてくれたんだよ!!!』

マイケロ-『僕たちの心が変わったから、出会う動物も変わったんだね。イノシシさんと僕たちが出会ったのも偶然じゃないんだね!』

イノシシの弟-『君たちは面白いね~。まさか、心の話をするとは思わなかったよ。でもね、それは本当だと思うよ。仙人さんも、同じ事を言ってたしね。』

バランチュ-『えー!イノシシさんも、赤仙人さんと話をした事があるの?僕もね~、赤仙人さんに色々教えてもらったんだー。』

イノシシの弟-『赤仙人??』

バランチュ-『いつも、お酒ばかり飲んでて、顔の赤いお爺さんだよ。』

イノシシの弟-『僕の出会った仙人さんとは、違うみたいだね。ほら、あそこにつぶれた小屋があるだろう。今はもう、誰も住んでいないけど、あの小屋に昔住んでいたんだよ。名前は確か、青仙人とか言ってたね。』

マイケロ-『青仙人!??(なんじゃ、それりゃ!)』

イノシシの弟-『僕は、その仙人さんには、1回しか会ってないんだ。その日は、とても寒くってね。食べ物を探して、あちこち歩き回ったけど、全く見つからなくてね。もうダメだって思ったよ。このまま死ぬんじゃないかってね。それで、あの小屋に入ったら仙人さんに会ったんだ。』

バランチュ-『ふ~ん。』

マイケロ-『・・・で、その仙人さんは何て言ったの?』

イノシシの弟-『【今すぐ、ここから出て行け!】って、言われてね。』

バランチュ-『ひどい仙人だ!!そんなのは、仙人じゃないよ!』

マイケロ-『そうだよ!まるで悪魔だよ!』

イノシシの弟-『それでね、小屋から出た瞬間・・・。』

バランチュ-『・・・。』

イノシシの弟-『なんと、その小屋に雷が落ちたんだよ!』

マイケロ-『わぁい、天罰だね!』

バランチュ-『ざまぁみろ!って感じだね。』

イノシシの弟-『僕もね、最初はそう思ったよ。なんて、冷たい仙人さんなんだ!ってね。そして、食べ物を探しに、またしばらく歩き出したけど、なかなか見つからなくてね。そして、その時、フッと思ったんだ。ひょっとして、あの仙人さんは、雷が落ちてくることを知っていて、それで僕に【今すぐ、ここから出て行け!】って言ったんじゃないかってね。』

マイケロ-『それは考えすぎかもよー、僕は天罰説が濃厚だと思うけどな~。』

バランチュ-『いや、イノシシさんの言う事も一理あるかもよ。』

イノシシの弟-『僕の命を救ってくれたんじゃないかって思うと、仙人さんの事が心配で心配で、小屋まで急いで走ったんだ。丸太や木をかきわけて、小屋の中を頑張って探したけど、仙人さんは何処にも見当たらないんだよ。でもね、そこにあったんだよ!!!』

バランチュ-『何があったのー。』

イノシシの弟-『リンゴが二つあったんだよ!!』

マイケロ-『え~、本当?良かったね!!』

イノシシの弟-『天からの贈り物だ!って思ったよ。それでね、もうお腹がペコペコだったので、一つ目のリンゴはあっという間に胃袋の中さ。そして、二つ目のリンゴを食べようとした、その瞬間!!!』

マイケロ-『瞬間?』

バランチュ-『え?何が起こったの?』

イノシシの弟-『仙人さんが目の前に現れたんだよ。これには、僕もビックリしちゃってね!思わず、幽霊かと思って飛び上がっちゃったよ。そして、お腹がペコペコの僕に、仙人さんがこう言うんだ。』

マイケロ-『・・・(え!?幽霊がしゃべっちゃうの?ゲロゲロ)』

バランチュ-『・・・(なんだか、コワ~い!でもドキドキー、ワクワクー!)』

イノシシの弟-『【二つ目のリンゴを食べるつもりなのか?】ってね。』

10.相手への思いやりが、幸せに繋がる

バランチュ-『・・・でイノシシさんは、何て答えたの?』

イノシシの弟-『【どうして、二つ目のリンゴを食べたらダメなんですか?】って仙人さんに聞いたんだ。』

マイケロ-『・・・でその幽霊仙人さんは、何て言ったの?』

イノシシの弟-『【二つ目のリンゴを食べてしまうと、また同じことの繰り返しになってしまうぞ】って言うんだよ。仙人さんの言ってる意味がわからなくてね。』

バランチュ-『そりゃあ、意味わかんないよね。』

イノシシの弟-『仙人さんはね、【どうして、ここにリンゴがあったと思う?】って言うんだよ。』

マイケロ-『どうして、そこにあったの?』

イノシシの弟-『【わしの事を心配したからこそ、小屋に戻ってリンゴを見つけることができたのじゃろう】って言うんだ。確かに、仙人さんの事を恨んだまま、あの寒さの中、食べ物を探していたら、きっと飢え死にしていただろうって思ったんだ。』

バランチュ-『じゃあ、イノシシさんがリンゴを見つけることができたのは、偶然じゃないってことだね。でも、どうして二つ目のリンゴを食べたらダメなんだろう?』

イノシシの弟-『仙人さんに言われて、僕はハッと気づいたんだ。兄さんは足をケガしているから、僕よりも食べ物を見つけるのは大変だろうなってね。それで、二つ目のリンゴは、兄さんに渡そうって思ったんだ。そう思ったら、なんだかとても嬉しくなってきてね。』

マイケロ-『二つ目のリンゴが食べられないのに、どうして嬉しいの?』

イノシシの弟-『兄さんは、僕が小さい頃によく、食べ物をとってきてくれたんだ。だけど、大人になってから、兄さんとケンカしてしまってね。だから、兄さんが足に大ケガをしたっていう噂を聞いても、ほとんど気にも留めることがなくなってね。』

バランチュ-『それで?』

イノシシの弟-『兄さんの家に行ったら、疲れ果てた顔をしてグッタリしてたんだ。ちょっと気まずいな~って思ったんたけど・・・。【兄さん、リンゴをあげるよ!】って言ったんだ。でも兄さんは、【いらないよ!食べ物くらい、自分で見つけてくるよ!】って言うんだ。』

マイケロ-『意地っ張りな兄さんだね。』

イノシシの弟-『【足が悪いから、食べ物を見つけるのは大変でしょ。心配でちょっと見にきたんだよ。】って言って、リンゴをそのまま置いてきたんだ。するとね、次の日から不思議と、食べ物が見つかるようになったんだよ。また、天からの贈り物だって思ったよ。その時初めて、仙人さんの言った言葉に感謝できるようになったんだ。』

バランチュ-『相手を思いやる気持ちって、大切なんだね。』

イノシシの弟-『次の日にまた、兄さんの家に行って、食べ物を持っていくと、今度は素直に喜んでくれてね。兄さんの目から涙が出てくるのを見た時は、僕も嬉しくって、つい涙が出てしまったよ。【兄さん、困っている時はお互い様だよ。小さい頃、兄さんは食べ物をよく僕にくれたじゃないか、だから、今度は僕が食べ物を見つけてくる番だよ。】って言ったら、兄さんは、また大泣きしてね。・・・さあ、街に着いたよ!!』

バランチュ-『えー!もう街に着いたのー!』

マイケロ-『うわぁ、人がいっぱいだな~。』

・・・・・

イノシシの弟-『あそこにお店が見えるだろう?あれが薬局だよ。でも君達は小さくて、薬を取ってくるのは大変だから、僕が薬をとってきてあげるよ。』

バランチュ-『ありがとう、イノシシさん。』

イノシシの弟-『じゃあ、ここで待っててくれるかい?』

マイケロ-『あの~、実は他にも用事があるんだ。僕は、【行列のできる店】でチャーシュー入りのラーメンが食べたいケロ。』

バランチュ-『僕は、大きなイチゴがのっかったショートケーキが食べたい!』

イノシシの弟-『ラーメン屋さんは、あそこの薬局の隣だよ。ほら、外にいっぱい人が並んでいるだろう。そしてケーキ屋さんは、ラーメン屋さんの隣の隣だよ。僕は今日、食べ物を集めに10軒ほど回らなければならないから、1時間後にまたここで待ち合わせしよう。』

バランチュ-『じゃあ、イノシシさん気をつけてね!』

イノシシの弟-『君たちも気をつけるんだよ。』

・・・・・

マイケロ-『わぁ~、人がいっぱいいるね。いい匂いだケロ!』

バランチュ-『人に見つかるとヤバいから、隅っこのカウンターに行こうよ。』

マイケロ-『あっ、ラーメンが出てきたケロ!』

バランチュ-『じゅるじゅる・・・このスープ上手いね。』

マイケロ-『チャーシューも美味いケロ!!』

お客-『なんじゃ、こりゃあーー!!!ネズミとカエルが俺のラーメンを食ってるゾー!おい!店長!お前の店は、客をバカにしているのか!』

店長-『お客さん、冗談はやめて下さいよ。ネズミとカエルがラーメンを食べている?ん~なわけないでしょ!(たまに頭のイカれてる客が来るんだよな~、ったく!)』

お客-『だったら、こっちに見に来いよ!ったく!!』

店長-『お客さん、ネズミとカエルはどこにいるんですか?』

お客-『よく見ろよ!!・・・あれ?いないぞ。本当だよ、さっきまでここでラーメンを食べていたんだ。嘘じゃないんだ!!』

店長-『お客さん、悪質な営業妨害は止めて下さいよ!!・・・ったく!』

マイケロ-『ねぇ、バランチュ~、こっちのラーメンはとんこつ味みたいだね。しょうゆ味もいいけど、こっちも美味いケロ!!じゅるじゅる~・・・。』

バランチュ-『じゅるじゅる・・・とんこつ味も最高だね!』

お客A-『キャーー!!ネ、ネズミが私のラーメンを食べてるわ!!』

お客B-『こっちは、カエルがチャ、チャーシューを食べてるゾ!!』

店長-『そんなバカな!あっ!本当に、ネズミとカエルがラーメンを食べてる!!俺の店を潰す気かーー!!ブッ、ブッ殺してやるーー!!!』

マイケロ-『ヤ、ヤバイよ、バランチュ!人がこっちに向かって走ってくるよ!!』

バランチュ-『(殺気を感じる・・・)。マイケロ、早く逃げよう!!』

店長-『待たんかい!、コラァー!!!』

・・・・・

バランチュ-『フッー、危なかったね!』

マイケロ-『殺されるかと思ったよ。でも、ラーメンが食べれて、凄く幸せだケロ。』

バランチュ-『それ、なあに?』

マイケロ-『チャーシューだよ。とっさに持ってきちゃった。バランチュにもあげるよ。』

バランチュ-『(マイケロも、凄い執念だな!)ありがとう。パクパク・・・美味い!』

マイケロ-『じゃあ、次はいよいよケーキの番だね!!』

バランチュ-『ワクワクするね!!』

11.夢が叶っても危険はつきもの

バランチュ-『わぁ~、ケーキがいっぱい並んでるよ!!』

マイケロ-『本当だー、どれも美味しそうだね!!よーーし、ジャ~ンプ!!痛てて・・・。』

バランチュ-『ガラスがあるから、正面突破は無理だよ。裏に回ろう。』

マイケロ-『あっ、ガラス戸が空いてるよ。』

バランチュ-『本当だ~、ツイてるね。それじゃあ、侵入開始~!!』

マイケロ-『わぁ~、いい匂いがプンプンするねー。早速頂きまーーす!!パクッ!パクッパクッ!』

バランチュ-『どれにしようかな?やっぱり、イチゴのショートケーキから食~べようっと。パクッ!・・・超美味いーーー!!!思わず、ほおずりしちゃったりして~。スリスリ』

マイケロ-『わぁ~、バランチュの顔がクリームで真っ白になったケロ!』

・・・・・

店員-『いらっしゃいませー。』

お客さん-『え~と・・・(え?これは何?もしかして、ネズミ???これは何?もしかしてカエル???帰ろう・・・。)』

店員-『あれ~、あのお客さん、無言で帰ってしまったな。どうしたんだろう?』

・・・・・

バランチュ-『このケーキは美味い!なんだかチーズの味がする!ケーキとチーズが合体してるなんて、こりゃあ凄い味だ!マイケロも食べてみなよ!』

マイケロ-『本当だ~、チーズの味がするね。こっちはチョコレートケーキみたいだよ。ケーキとチョコを同時に食べられるなんて、幸せだケロ!』

・・・・・

店員-『いらっしゃいませー。』

お客さん-『(ゲッ!ほとんどケーキがないじゃないの!しかも、ないどころか、何でこんな所にネズミとカエルがいるのよ!!こんな不衛生なお店なんか二度と来ないわ!)』

店員-『あれ~、また、無言で帰ってしまったな。どうしたんだろう?』

・・・・・

店長-『そろそろ、ケーキを補充する頃だろ。』

店員-『それが~、お昼からまだ1個も売れてないんですよね。』

店長-『なに~!!そんなバカな事はないだろ!』

店員-『本当ですよ、お客さんは皆、無言で帰ってしまうんですよ。』

店長-『お前が愛想のない顔で、突っ立ってるからだろ!もっと笑顔で接客しろ!』

店員-『どのお客さんも、僕の顔を見て帰るというよりは、ケーキを一通り見てから、帰ってしまうんですよ・・・、不思議だな~。』

店長-『ケーキがないんじゃないのか!今すぐ確かめてこいよ!』

・・・・・

店員-『ガーーーン!!!ケーキがほとんどない!!ないというよりも、食い荒らされている感じだ。あぁー!ネズミとカエルが何でこんな所にいるんだ!!!』

マイケロ-『あっ!誰かがこっちを見てるよ!』

バランチュ-『本当だ。やばい、逃げよう!!!』

店員-『またんかい!コラッー!!!』

マイケロ-『ピョーン、ピョーン!!』

バランチュ-『ダッーーシュ!(食べ過ぎて、体が重いでチュ)』

・・・・・

マイケロ-『ふぅ~、ここまで来れば大丈夫だね。あれ?バランチュがいない。バランチューーー!!!どうしちゃったんだろう?お店まで引き返してみよう。』

・・・・・

マイケロ-『あぁ~~、バランチューーー!!!』

バランチュ-『捕まっちゃったよ・・・グスン。カゴに入れられたら、もうここからは、出られないよ。』

マイケロ-『僕一人で逃げてしまって・・・。てっきり、バランチュも後からついてきてると思ったから・・・。ごめんよ、バランチュ。どうしたらいいんだろう?』

バランチュ-『僕の事はいいよ。だって、ケーキをいっぱい食べることができて、僕の夢は叶ったんだからね。だから、ここで殺されても、何も悔いはないよ。それよりも、マイケロは早くこの場から離れるんだ!』

マイケロ-『そんな事、言わないでよー、バランチュ。ウェ~ン』

バランチュ-『早く逃げないと、マイケロも捕まってしまうよ!それに僕とマイケロが捕まってしまったら、薬は誰が届けるんだい?さぁ、早く逃げて!』

マイケロ-『嫌だよ、嫌だよ!バランチュを見殺しになんかできないよ!そんなのできるわけがないよ!いつも、一緒だって、言ったじゃないか!!』

バランチュ-『お願いだから、マイケロ、早くこの場から離れるんだ!あっ!人が近づいてきた・・・、早く逃げるんだ!!!』

マイケロ-『わかったよ・・・。(必ず助けに来るよ)』

・・・・・

イノシシの弟-『そりゃあ、大変だ!早く助けに行こう!お店はどこ?』

マイケロ-『ケーキ屋さんだよ、グスッ』

イノシシの弟-『じゃあ、早く背中に乗って!』

マイケロ-『うん。』

・・・・・

店長-『おい、なにグズグズしてるんだよ!早くそのバケツの中に、カゴごと入れちまえよ!』

店員-『え~!僕がやるんですか!嫌だな~。』

店長-『後は、頼んだぞ!』

バランチュ-『ゲッ、水の中で死んじゃうの!(でも、火あぶりにされたり、切り裂かれたりするよりはましか!)』

店員-『ドッポーン。じゃあ、さいならねー。』

バランチュ-『アッ!アッー!沈んでいくーー!』

・・・・・

マイケロ-『バランチュ~~!助けに来たよー!』

バランチュ-『ここだよ!!!バケツの中だよ!!早くしないと、沈んじゃう、ブクブク・・・ブクブク・・・。』

イノシシの弟-『よし!今助けてあげるよ!』

バランチュ-『ゴホゴホ・・・ありがとう、イノシシさん!もうちょっとで死ぬ所だったよ。ゴホゴホ』

イノシシの弟-『今、カゴから出してあげるよ。』

マイケロ-『バランチュ~~!助かって良かったねー!』

バランチュ-『ありがとうマイケロ!助けに来てくれたんだね!』

店長-『ふざけやがって!何で店の中にイノシシがいるんだ!!オリャーー!』

イノシシの弟-『ゴキッ・・・ウッ・・・。』

店長-『もう一発、食らえ!コノヤロー!!』

バランチュ-『やばいよ、やばいよ。バットで殴ったら、イノシシさんが死んでしまうよ!』

店員-『いらっしゃませー!』

店長-『あっ、いらっしゃませー。(バットは、隠さなきゃ、汗汗)』

お客さん-『この間のケーキ、とっても美味しかったわよ!』

店長-『ありがとうございます。(くそ~、逃げられてしまったか。運のいい奴らめ!)』

12.バランチュに寿命が訪れた?

マイケロ-『イノシシさん、大丈夫~?』

イノシシの弟-『ああ、大丈夫だよ。骨が何本か折れているみたいだけどね。まさか、正面からお店の中に入っていくとは思わなかったから、ビックリしたよ。』

バランチュ-『じゃあ、イノシシさんは、どうやって食料を集めたの?』

イノシシの弟-『お店の裏口に、余り物が捨ててあるから、それを頂戴するのさ。』

マイケロ-『ふ~ん。』

イノシシの弟-『あっそうだ!薬を渡さなきゃね!』

バランチュ-『ありがとう、イノシシさん。あっ!忘れてた!!』

イノシシの弟-『どうしたんだい?』

バランチュ-『赤仙人さんに、お酒を頼まれてたのにすっかり忘れてた!どうしよう~。』

イノシシの弟-『心配いらないよ。お酒なら、兄さんが好きだから、ちゃ~んと確保してあるんだ。』

バランチュ-『良かったー!』

・・・・・

イノシシの弟-『着いたよ。』

イノシシ-『ご苦労だったなー。ケガをしているみたいだけど、大丈夫か?』

イノシシの弟-『大丈夫だよ。それより、兄さんの好きなケーキを調達してきたよ!』

イノシシ-『ありがとうー!待ってたよ!・・・パックン。もう一つ、パックン!!美味いーー!!』

マイケロ-『(凄い!一口で食べてしまうなんて!)』

イノシシ-『お前たちも、食べるか?』

バランチュ-『僕たちは、街でお腹いっぱい食べてきたから、いらないよ。』

・・・・・

イノシシの弟-『さて、君達とは、とうとうお別れだね。』

バランチュ-『ずっとイノシシさんのそばにいたいな~。』

マイケロ-『僕もイノシシさんと、ずっと一緒にいたいケロ!それにラーメンやケーキがいつでも食べれるなんて、羨ましいケロ!』

イノシシの弟-『でも、君達は薬を届けなければならないだろう?』

バランチュ-『ねえねえ、薬を届けたら、またここに遊びに来てもいい?』

マイケロ-『僕も、また来たいケロ!』

イノシシの弟-『ああ、大歓迎だよ。いつでも待っているよ!』

バランチュ-『それじゃあ、イノシシさん、元気でね!ありがとう!』

マイケロ-『ありがとう!イノシシさん!さようならー!!』

・・・・・

マイケロ-『随分、歩いたね(ゲロゲロ)』

バランチュ-『うん。』

マイケロ-『バランチュ~、どうしたの?具合でも悪いの?なんか元気がないよ。イノシシさんと別れるのがショックだったんだね。』

バランチュ-『それもあるんだけどね。何故か、直ぐに疲れてしまうんだ・・・。』

マイケロ-『無理もないよ。かなり歩いたからね。じゃあ、僕がおんぶってあげるよ。・・・よ~いしょっと!(重い・・・)』

バランチュ-『マイケロ、無理しなくてもいいよ。疲れているのは、マイケロも一緒なんだから。』

マイケロ-『大丈夫だよ(フッ~・・・フラフラ)』

バランチュ-『マイケロ、少し休もう。』

マイケロ-『うん、そうだね。』

バランチュ-『ひょっとしたら・・・。もう、僕には寿命が近づいているのかもしれない。』

マイケロ-『そんな事ないってばー。気のせいだよ!ここで一晩寝れば、疲れもなくなるはずだよ。あっ、そうだ、ただの風邪かもしれないよ。ヘビに持っていく薬を少し飲んだらいいよ。』

バランチュ-『そうだね、今日は薬を飲んで寝るよ。おやすみ~。』

・・・・・

マイケロ-『おはよう、バランチュ!気分はどう?』

バランチュ-『薬のおかげかな?気分はいいみたいだよ。』

マイケロ-『良かったー!やっぱりただの風邪だったんだね。それじゃあ、出発しようか!』

バランチュ-『うん!』

マイケロ-『そういえば、お酒を届けに、赤仙人さんの所へ行かなければならないね。』

バランチュ-『たぶん、もう少しだと思うよ(フ~ラフラ、フ~ラフラ、ヨロヨロ、ドッテン!)』

マイケロ-『バランチュ~、どうしたんだい?いま出発したばかりなのに、もう休んでいるのかい?』

バランチュ-『ごめんね、マイケロ・・・。もうダメみたい・・・。』

マイケロ-『ダメみたいって?どういうことなの!!?』

バランチュ-『体がもう、自由に動いてくれないみたいなんだ。』

マイケロ-『動かない?じゃあ、僕がまたおんぶってあげるよ!』

バランチュ-『いや、ダメだよ。マイケロは気がついてないかもしれないけど、マイケロの体が衰えてきているのは、僕の目から見てもハッキリわかるよ。ただ、僕の衰えよりも、進行が遅いだけだよ。』

マイケロ-『じゃあ、バランチュはこのまま死んでしまうのかい?そんなのは絶対に嫌だよ!嫌だよ!』

バランチュ-『残念だけど、マイケロとは、ここでお別れだよ。マイケロの気持ちはとても嬉しいけど、僕をおんぶったら、共倒れになってしまうよ。二人がいなくなったら、ヘビの薬は誰が届けるの?マイケロ一人だったら、何とかヘビの家まで辿り着く事ができるはずだよ。』

マイケロ-『こんな所で別れるなんて、絶対に嫌だよー!バランチュが何と言おうと、背中におんぶって行くからね。よいしょっと!(軽い、軽い!)』

バランチュ-『マイケロ・・・。あっ、小屋が見えてきたよ。』

マイケロ-『行ってみよう!』

・・・・・

小屋の主-『誰じゃ・・・。』

バランチュ-『赤仙人さんですよね?』

小屋の主-『赤仙人じゃと?わしは、仙人仲間には、青仙人と呼ばれておる。』

マイケロ-『青仙人!?(ひょっとして、この爺さんが幽霊仙人?)』

小屋の主-『いつも薬ばかり飲んで、青い顔をしているから、そう呼ばれておる。』

マイケロ-『赤仙人さんは、何処に行ったの?せっかくお酒を持ってきたのにな~。』

小屋の主-『そのうち帰ってくるだろうから、わしが渡しといてあげるわ。』

マイケロ-『ねえ、青仙人さん!バランチュが寿命に近づいているみたいなんだ!なんとか、助けてあげて!!』

小屋の主-『それはできんな!寿命は自然の現象であって、病気とは違うのじゃよ!』

マイケロ-『だって、仙人さんなんでしょーー!!自然の現象くらいなんとかできるよね!』

バランチュ-『マイケロありがとう。もう、いいよ。仙人さんを困らせたら、可哀相だよ。』

マイケロ-『ねぇってばーー、仙人さん!!お願いだってばー!』

小屋の主-『一つだけ方法はある・・・。しかしな・・・。』

マイケロ-『しかし?』

続きは「疲れた時に癒される物語 悩みは天からの贈り物4」

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      2023/02/21

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